英語レポートとは、よく使われる用語ですが、どのようなものといえるでしょうか。
英語レポートとは、自然科学や人文科学分野で、英文でレポートを作成することになります。
英語レポートの作成は、大学や最近は企業などでもさけては通れない作業ともいえますが、どのように作成したらよいでしょうか。
本記事では、英語レポートの作成方法やそのポイントなどについて詳しく解説します。
目次
レポートとは、提起された問題に対して、客観的で論理性を保った状態で、自分の考えを含めて論述する学術的な文章となります。
レポートの種類には、資料や実験などの内容をまとめる報告形式のものと、自身の主張や論拠を述べる論述形式があります。
よく起承転結ともいいますが、まずテーマを設定します(起の部分)。次に、文献調査などをしてテーマに関する情報を整理・解析します(承の部分)。さらにこれらに基づき執筆をします(転の部分)。最後に、結論を記載して(結の部分)、レポートを作成します。
大学教育などで、大学生が研究室におけるレポートを作成するなどの場合がそれにあたります。
このようによく作成されるレポートを、英文で書いたものが英語レポートということになります。
目的としては、当該分野の研究に資するものなど、研究目的によるものが多くなりますが、大学教育自体で英語を取り入れるということもあるかと思います。
さらには国際学部など、英語での教育が一般的な学部もあり、このような場合は英語レポートも必須です。また企業や研究所などでも、英文でレポートを作成することが昨今多くなっています。
このようによく作成される英語レポートですが、ここでは、英語レポート作成時の事前準備のポイントや、英語表現などについて紹介します。
日本語より英語で作成する方が、事前準備としては論理的に実施できるかもしれません。
できればまずレポートのアウトライン(構成)を準備してから、実際の本文を作成することをおすすめします。
箇条書きで、タイトルや序論、本論などに記載する内容をメモしていきます。いきなり本文を書き始めると、起承転結ではないですが、全体的にアンバランスな文章となることもありえます。
タイトルは、アウトライン作成時には仮でつけておき、全文が完成してから修正するという方法もあります。
参考「研究論文のアウトラインとは?研究に役立つアウトラインの構成から書き方まで解説」:https://compass.readable.jp/2024/08/25/post-296/
箇条書きにおいても、できれば英語で記載してみましょう。英語は日本語より論理構成がはっきりしているので、よりレポートの構成把握が容易になる効果も見込めます。
ただし最終的には、次の項目でも記載しますが、通常の英語、特に米語表現で使用するような基本的な動詞などはなるべく使わないようにします(論文に適した表現あり)。このため米語表現で当初は記載しておき、これを論文やレポートによく使われる動詞表現に置き換えるのは、比較的容易であると思われます(次項も参照してください)。
研究室でのレポート作成作業であれば、ブレインストーミングなどで、他の研究室メンバーから作成するテーマに関するアドバイスをもらうのもよいでしょう。
またアウトライン作成後の段階で、指導教官や他のメンバーの意見を聞くということも考えられます。大学では、ひとりで完成させるという提出用レポートもありますので、一概にはいえませんが、可能ならば論文でもレポートでも他者の意見も聞いて作成した方が、質の高いレポートとなります。
日本語より英語の方が、論理性のあるレポートには適しており、文法上も有利です。日本語では冗長な表現となる場合もあるので、研究成果を直接表現するときに役立ちます。
このように利点の多い英語表現ですが、レポート作成時には注意すべき点があります。
特に米国英語で多い、基本動詞get、 take、 makeなどは、レポートの場合はあまり使用しません。大学生以上が作成する場合は、それぞれ専門的な動詞に置き換えることが大切です。このような動詞は、当該分野の論文やレポートにすでに使用されていることが多く、そのような動詞を使います。なお場合によっては、対象となる領域で頻出している動詞などが、領域が違うと異なることもあります。
英語レポートや論文でよく使用される表現を下記に紹介します。
The main objective of this paper is that・・・
当該のレポートや論文の研究目的を紹介する場合、よく使用されます。
It has been often discussed that・・・
英語表現であっても、第三者の視点での表示が一般的であり、レポートの序論などで研究背景などを説明する場合に、有益です。
It is important that・・・
〇〇は重要であると記載する場合に、便利な文章です。こちらは、自身(一人称)が断定しているのではなく、普遍的な表現(三人称)としていることがポイントです。
There is a possibility that・・・
The result suggests that・・・
本論などの考察部分で便利な表現です。英語のレポート表現でも、一人称ではなく三人称表現とすることが多くなっています。
英語レポートの実際の書き方について、タイトル、序論、本論、結論にわけて記載します。
英語レポート作成において、まず大切なことは適切なタイトルをつけることです。
実際は適切なといっても、なかなか難しい課題ですが、レポート作成に慣れていない場合は、できれば仮のタイトルをつけることをおすすめします(またレポートのアウトライン作成時に、仮タイトルをつけるのも有効です)。
タイトルといっても、レポートに含まれる内容、特に本論で述べる部分を十分にあらわしたものでなくてはなりません。
英語の研究論文であれば、当然、当該分野の英語キーワードを含む必要があります。
また新たに自身で考案した部分があれば、それを強調する用語を使用します。場合によっては、自身で考案したキーワード等を記載するのもありですが、その場合は序論などで十分に説明しておく必要があります。
ただし「新しい(New)」という用語は、あまり使用しないようにします。レポートはたいていの場合、あらたな研究や発見、事実などを含んでおり、新規性という要因はレポート作成には必須であるからです。
序論、本論部分については、自然科学系と人文科学系のレポートではやや異なります。
まず序論ですが、自然科学系については、当該研究の背景や従来の研究の紹介を記載します。研究背景に必要なキーワードについても、前項で述べたように、できるだけ指定したり記載しておくようにします。
さらには、実験方法についても述べておく必要があります。なお当該レポートが、実験をともなわず、直接、実験結果を記載するようなショートレポートの類や、大学学部より、書き方を指定されているなどでは、記載しない場合もあります。
人文科学系の序論については、本論の前の主題に関する解説などを記載します。
当該レポートの前提となるキーワード等についても、定義したり解説する必要があります。所属する大学学部などの指定にもよりますが、本論の背景となる命題部分を記載しておく必要があります。
本論についても、自然科学系と人文科学系のレポートでは記載が異なります。
自然科学系では、研究の結果とその考察を含む、レポートのカギとなる部分です。
実験等を実施後に、実験ノートなどを参照しながら、過不足なく箇条書きで記載します。実際の実験データや、データを記載したグラフや表なども適切に掲載することが必要です。
考察部分は、実験結果を記載したのちに分けて書きます。結果と考察ははっきりとわかるように記載します。実験結果からは類推が難しい内容を含む考察は、さけるようにします。また序論の部分で紹介した他の参考論文との整合性や、自身の研究目的がどのように達成できたのか、具体的に説明します。
なお実験ノートについては、特有な書き方があり、本コラムの中でも関連記事を紹介しています。
参考「実験ノートとは?研究に役立つ、ノートの使用法やコツについて解説」https://compass.readable.jp/2024/09/14/post-282/
人文科学系でも、主題を記載するのに必要なデータや図表がある場合もあります。この場合は、適切にその出展なども含めて記載しておくことが大切です。経済学のレポートなど、どのデータを使用するのか、それにより判断が違う場合もありうるからです。
たとえば市場金利や賃金、失業率など、適切にデータを使用します。なお失業率などでも、国によっては実情を反映していない場合もあり、経済学分野などでは特に注意が必要です。
主題の中で、当該データに関する自身の解釈とその解釈に対する今後の方向性など、考察に類する項目も併せて記載すればよいでしょう。
結論については、レポートの適用分野でやや異なります。
自然科学分野では、英語でサマリーといわれる部分と一部重なります。序論、本論で記載した事実、発見、考察を箇条書きで、論理性を保った状態で記載します。なおサマリーは、レポートの後半ではなく、最初に記載される場合がほとんどです。
自然科学分野では、多数の論文を遅滞なく網羅検索する必要もあり、この結論部分が特に注目されています。当然、結論部分の記載には、自身の研究に関連するキーワードなども含みます。検索はキーワード中心に実施されるからです。
人文科学分野では、最後に結論が記載されることが多いようです。
この場合でも、必要なキーワードを含み、序論、本論で記載した事実、発見、考察を箇条書きで、論理性を保った状態で結論を作成します。本論で記載した考察部分を深堀しておくことも必要でしょう。
単一のレポートではなく、続けて自身の研究成果をレポートで紹介する場合などは、今後の展開にもつながるあらたな命題も文章化しておくとよいでしょう。
英語レポートのポイントや注意点についても紹介します。
英語レポートの作成ポイントについてかなり記載しましたので、上記以外の点についても紹介してみます。
当該研究分野での英語レポートを、読む機会はかなりあると思います。いきなり自身のレポートを書き始めるのではなく、他の文献を参考にすることが大切です。
実際のレポートの序論部分でも、他の文献の紹介から始まる場合が多いからです。このような関連レポートで使用されている英語表現を参考にすることは、十分に役立ちます。
自然科学系と人文科学系では多少の違いはありますし、同じ自然科学系でも、医療分野に頻出している表現はやや異なります。人文科学系でも、心理学系と歴史・語学系では異なる場合もあります。
研究中のある分野をまとめたレビューのようなレポートもありますが、この場合はあらたな〇〇ではなく、〇〇などを含むタイトルをつけることが大切です。
たとえば人文科学系の場合でも、ナラティブレビューの場合のような「著者の過去の経験や、当該研究の対象としている研究データやその解釈を、独自の立場から科学的に明らかにしていく」というようなレポートもありえます(下記資料を参照)。
参考:「ナラティブレビューとは?システマティックレビューとの違いや効果的な使い方を解説」:https://compass.readable.jp/2024/09/26/post-356/
レポートであっても、起承転結の構成は大切で、序論では構成の起承部分にあたります。本論や結論では、転結が期待されるような記載をこころがけるとよいでしょう。またレポートによっては、トピックス的な一連の背景も含むと、読む人の期待をさらに高めることもできます。
英語レポート作成時の注意点についても記載しておきます。
自然科学系、人文科学系とも、強調したい部分には、イタリック体を通常使用します。
ただし自然科学系、特に生物分野ではイタリック体は、生物の学名(属、種、株など)に使用することとなっており、注意が必要です。生物分野のレポートでは、イタリック体は一般的に学名とみなされるからです。
なお属名の頭部分のみがイタリック体の大文字で、あとは小文字となります。蛇足ですが、特に学名のつづりは間違えないようにします。間違っている場合は、学術論文の場合は受理されません。
人文科学系でも、英語レポートのフォーマットには多少の違いがあります。
□ Chicagoスタイル
歴史分野や機械工学系のレポートでよく採用されているフォーマットです。
フォントとしてTimes New Romanを使用し、12ポイントの文字を使用します。行間は2行で、著者名や日付は最初のページの左上に掲載します。
□ APAスタイル
社会科学や心理学の分野でよく利用されているフォントです。
フォントとしてTimes New Romanを使用し、12ポイントの文字を使用します。行間は1.5で、著者名はタイトルの下に3行あけて記載します。日付は著者名の下の行となります。
これ以外にも多少異なるフォントがあり、自身の分野でどれが使用されているか調べておくことが必要です。たとえば心理学分野であれば通常APAスタイルのため、PCでの設定を行間1.5で設定しておけば、容易に当該レポートを複数作成することができます。
なお自然科学分野では、学会誌ごとにフォントなどを含む投稿規定がこまかく設定されている場合があります。この場合は、その投稿規定にしたがって、論文やショートコミュニケーションなどのレポートを作成するようにします。
英語レポートについて、その特徴から事前準備のポイントや、実際のレポート作成方法に加えて、特有な英語表現やポイントについても解説しました。
英語レポートとは、自然科学や人文科学分野において、英文でレポートを書くことになります。このため、それぞれの特有な英語表現やポイントについても注意して作成することが大切です。
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都内国立大学にて、研究・産学連携コーディネーターを9年間にわたり担当。
大学の知財関連の研究支援を担当し、特にバイオ関連技術(有機化学から微生物、植物、バイオ医薬品など広範囲に担当)について、国内外多数の特許出願を支援した。大学の先生や関連企業によりそった研究評価をモットーとして、研究計画の構成から始まり、研究論文や公募研究への展開などを担当した。また日本医療研究開発機構AMEDや科学技術振興機構JSTやNEDOなどの各種大型公募研究を獲得している。
名古屋大学大学院(食品工業化学専攻)終了後、大手食品メーカーにて31年間勤務した経験もあり、自身の専門範囲である発酵・培養技術において、国家資格の技術士(生物工学)資格を取得している。国産初の大規模バイオエタノール工場の基本設計などの経験もあり、バイオ分野の研究・技術開発を得意としている。
学位・資格
博士(生物科学):筑波大学にて1994年取得
技術士(生物工学部門);1996年取得