卒論は、大学生活の最後として必ず作成しなければなりません。
卒業の条件においても、卒論作成はほぼ必須の作業となっています。
このように重要な卒論は、どのように書いたらよいでしょうか。
本記事では、卒論の書き方について、事前準備の方法から作成時の注意点まで詳しく解説します。
目次
卒業論文(卒論)は、大学教育の集大成ともいえるものです。大学生活の最終年度において、自身の研究領域について、自身の研究成果や自身の考え方をあらわしたものとなります。
卒論には、どういう問題について、どのような研究を行って、その結果どのような 結論が得られたか、というプロセスがすべて網羅されていなければなりません。
卒論を書くにあたって、最も重要なことのひとつは「卒論テーマの設定」です。メインテーマは、明確に設定する必要があります。
卒論作成間際になって、あわててテーマを設定するより、自身の研究生活で課題となっていることをしっかり検討しておくことが大切です。研究室などの講読会で紹介されて、自身が興味を持ったテーマなど、日頃から卒論テーマについても考えておくことをおすすめします。
このような先行研究の検索や分析といった作業にも、日頃から着実に取り組むようにしましょう。卒論テーマについても、自身にとって興味のある課題を比較的たやすく抽出することもできます。
先行研究の分析により、現在どのようなことが未解決なのか知ることができます。このような研究課題は立派な卒論テーマともなります。
もちろん自身で考えたテーマでもよいでしょう。指導教官とも相談の上、卒論に取り上げるテーマを設定します。当該分野にはまだ精通していない訳ですから、場合によってはすでによく実施されているテーマだったりすることもあります。このため教官などのアドバイスは自分にとって貴重なものとなります。
まず卒論の作成・提出方法ですが、同じ大学でも学部や各研究室で異なる可能性があります。このため、所属する各研究室の指導教官の指示に従うのがよいでしょう。
また文科系と理科系では、事前準備の期間に違いがあります。通常理科系では、卒論も自身の実験結果を包含したものになります。このような卒業研究は、1年間、場合によりそれ以上をかけて実施する場合もあります。
このため、卒論の準備期間も、実験開始からはじまっていると考えるべきです。理科系の卒業研究では、通常はその内容をもとに卒業論文も作成されます。
これに対して、文科系の卒論はもう少し時間的余裕があります。たいていの場合、卒論の提出時期は、2月頃となりますので、1月にはいったら卒論の作成作業に入る必要があります。
ただこの場合は、すでにメインテーマや卒論用資料などの検索や収集は終わっていることが大切です。資料の準備やテーマ設定は、できれば12月中には完了して、1月には本格的な卒論作成作業に入っている方がよいでしょう。
また理科系でも同じですが、できた卒論は大概の場合、指導教官の事前チェックがあります。なお指導教官も多数の学生を指導している場合もあり、その場合は時間がなかなか取れません。
場合によっては、複数回の卒論チェックや修正があるときもあります。このため、卒業年度にはいったら、できれば早めに指導教官のアドバイスにしたがうことが得策です。
また卒論作成に取り掛かる前に、文科系では、自身の卒論テーマに関する文献や資料を収集して読み込んでおく必要があります。
理科系でも、実験だけをするわけではなく、たいてい毎週、研究室などで、重要な研究論文の紹介や購読なども実施されます。これ以外に、自分の実験研究の背景となる関連資料は読み込んでおきます。文科系、理科系ともに、関連研究や最先端の研究成果などの論文を複数収集することが大切です。
このような先行研究の論文収集と精読が、卒論でも重要な作業となります。まず図書館や専門の検索サイトから、自身の研究に関連する文献を収集します。また自身が所属している研究室での論文講読会などで紹介された資料も参考になります。関連した研究領域なので、特に最新の論文に関する内容が把握できます。
収集した先行研究はじっくり読みこむことが大切です。指導教官からも指示があるかもしれませんが、特に研究分野に従事しようとする人は、大学の段階できっちりと先行研究の収集や精読作業を身に着けてください。
なお先行研究で把握した関連資料は、あらかじめ卒論の準備作業として、手元に書き留めておくようにします。関連研究の論文や、外部の研究会などで自身が研究発表したものは、是非まとめておきましょう。卒論執筆時には、「参考文献」の欄にそのまま記載することもできます。
ここでは、卒論の実際の書き方について記載します。
なお、卒論文章の文尾は、”~です”, “~ます” ではなく、”~である”, “~する” を使います。 また、”~だろう”, “~と思われる”, “~のようだ” などの曖昧な表現は避けて、 “~である”, “~と考えられる”といった、なるべく客観的な言い回しを使うようにします。
卒論には、タイトルなどを記入する表紙部分が必要です。通例は、各大学や学部で規則があるので、それに従います。
卒業論文の年度、研究テーマ、提出日、学部・学科や、氏名(学生番号を含む)などの作成ルールに従って、記載してください。提出用の卒論はプリントアウトしたものを市販のファイルに綴じることもあります。 場合によっては、pdf ファイルなどの電子形式で提出することもあります。
なお卒論ではあまりないですが、修士論文や博士論文は、論文ボリュームも多いこともあり、論文の装丁が必要な場合があります。博士論文では、3丁以上作成し、ひとつは大学図書館、もうひとつは刊行物として、国会図書館に所蔵されます。装丁作業は、東京の本郷あたりに集中している専門の業者に頼む場合が多いようです。
研究論文の内容について、通常は500字程度でまとめます。なお学部によっては、文字数や要約スタイルが指定されていることもあります。
卒論以外の通常の研究論文でも重視されている部分で、書き方をマスターしておくと、今後の研究活動にも役立ちます。この概要を読めば、何を研究したのかがわかるように書きますが、具体的には、どういう問題について、 どのような研究を行って、その結果どのような 結論が得られたか、というポイントについて記載します。
なお概要部分は、卒論執筆時にはまず箇条書きで作成しておき、卒論完成後に再度修正して作成するのがおすすめです。
目次についても、書き方が学部等で指定されている場合があるので、それに基づいて記載します。通常は、章立て内容と、その対応ページを明記します。
研究背景を別途記載する場所がある場合は、自身の卒論テーマに関連する研究背景を記載します。まず、先行研究の紹介と批判的検討をします。
事前作業のところでも記載しましたように、日頃の先行研究の研究の収集・精読が役立ちます。自身の卒論テーマの研究背景・動機・目的などを述べるようにします。研究背景については、自分が行った研究分野において、 これまでどのような研究が行われてきたかを、 文献などを参考にして記載します。
なお先行研究の記述で大切なのは、キーワードも含む専門用語が厳密に使用されていることです。卒論では厳密性がそれほどではない場合もありますが、当該分野の論文を作成するためには重要な視点です。
これが間違っていたり、自分の解釈で使用されていたりすると、論文そのものの信憑性にも関わります。卒論でもできるだけ厳密な使用をこころがけてください。わかりにくい専門用語などがあれば、卒論作成の前に、研究室で質問等をして疑問を解消しておくことが必要です。
本論は、研究の内容について述べる核心のところです。
研究背景などで判明した、従来の研究からみえてきた問題や、自身が提起している研究テーマでは、どのような方法(実験方法や解析法など)により、 どう問題を検討し結果をえたのか、具体的に詳しく書いていきます。
研究結果の記載部分には、論文の読みやすさを向上させるために、図や表などを使って、内容を視覚的に表現する工夫も大切です。なお、添付図はもし他文献から参照した場合は、必ず文献名を引用する必要があります。
さらに卒論研究の結果について、できるだけ客観的な評価や考察をおこないます。本研究によって、どのような有効性が確かめられたか、 関連研究と比較してどのようなメリットがあるかなどの解説もつけます。
またもし実験や解析などがうまくいかなかったときは、その内容をありのままに記載し、さらに自身の研究でいたらなかった点などにもふれて、問題点を明確化しておくことが必要です。
卒論のまとめとなる部分であり、自身が疑問に思ったテーマに対して、自分の考えも記載します。
研究背景や本論で記載した問題提起に対して、卒論研究で何を明らかにしたのか、また、 今後の課題としてどのような問題が残されているのかなどのポイントも含まれます。
卒業論文とは、ある特定のトピックについて自分の提案や考えを述べるものです。このため論理的な議論を展開することが大切で、卒業にあたり大学教育での成果を示す場所ともなります。自身の研究論点を明確にし、具体的なデータに基づいて論理的に議論を進め、できるだけ客観的に書くことが大切です。
最後の章では、指導教官や本研究でお世話になった人へのお礼も記載します(例:本研究を行うに当たり、ご指導を頂いた〇〇先生に感謝致します。 また有益な議論をして頂いた研究室の皆様に感謝します・・・ )。
参考文献には、研究背景や本論で引用した資料が必ず含まれることが重要です(引用時には、記載先のところに番号をふっておき、最後にその順番により参考文献を記載します)。
書籍の場合は(著者、本の名前、出版社、発行年)、 論文や雑誌の解説記事の場合は、(著者、論文名、出典、ページ、発行年)を記載します。
外国語から翻訳された文献を参照した場合は、まず文献の原題を示し、次に訳者と翻訳題名、出版地:出版社、出版年を示します。Webページの場合でも、ページのタイトルとURLは必ず記載しておきます。また著者名や発行年なども記載することも大切です。
最後に、卒論作成のポイントや注意点についても紹介します。
卒論は、1年間かけて一つのテーマで研究を行った集大成ともいえるものです。
大学生になってはじめて取り組むわけですから、試行錯誤を繰り返しても、自分の力で卒業研究を完成させることが重要です。これは今後研究者以外の道にすすむ人にとっても、貴重な体験となります。
卒論作成に際して、とりあえず自分のテーマに関する論文をひとつでも見つけることができれば一歩前進となります。その論文の末尾には、必ず参考文献リストが示されているからです。そのなかから興味を持った論文を探し、その論文から他の論文を探すというようにして、関連する論文を収集することも可能です。
卒論には、必ずメインの研究テーマが必要です。テーマの設定の際に一番大切なことは、最終的には「自分で決める」ということです。指導教官のアドバイスも仰ぎながら、自分で決定します。それ相当の準備が必要ですが、そこに意義があるともいえます。
卒論作成時に問題を感じた場合は、卒業論文の指導教官に相談するのも良い方法です。当該の専門分野において、自分の考えたテーマが卒業論文として適当か判断するのは、なかなかむずかしいことです。ただし大切なのは、あくまで最終的にメインテーマを考えるのは自身で決断しなくてはなりません。社会にでれば、さらに大きな課題を解決しなければならない場合もあります。
卒論は、なるべく教官や他の読者にもわかりやすく書くことも大切です。
特にはじめての人にとって、研究の背景部分を書くのは、実はかなり難しいことです。それなりの文章を書くためには、その分野の十分な知識が必要とされるからです。また先行研究に対して、自分の主張を出す場合は、必ずどこまでが先行研究での主張で、どこからが自分の主張なのかをはっきりと区別することが必要です。
先行研究の内容をそのまま取り入れるのではなく、場合によっては、批判的に検討することも必要となります。卒業論文作成に利用するには、先行研究の内容をただまとめただけでは、論文にはなりません。
この辺が難しいところですが、その領域の専門家ではうまく解説できるようになります。複数の先行研究経験から来るもので、大学生ではまだ理論的な検索の仕方が身についていなかったり、具体的な研究例が少ないためです。
ただこの時期の経験は、研究者となっても貴重な経験ともいえ、しっかりと卒論を書くようにしましょう。また研究者でなくとも、社会にでれば、いろいろな課題や問題があり、それらに対して、自身の回答が求められる場合があります。
たとえば企業において、技術開発などや新商品戦略を担当した場合、どれが自社にとって最適か、非常に大きな課題となります。大学のようにどれが正解とはいえない場面もあり、実際には応用面の方が重要となるときもあります。
卒論は、大学教育の集大成ともいえるもので、是非、着実に取り組むことをおすすめします。
卒論の書き方について、事前準備からそのポイントや作成時の注意点まで説明しました。
事前準備では、特に先行研究にも時間をかけることが大切です。先行研究から卒論のテーマがみつかることもあります。
卒論は、大学生活の集大成ともいえるものです。しっかりと準備して、余裕を持って取り組みましょう。
本記事が、これから卒論に取り組もうとしている大学生のみなさまのお役に立てば幸いです。
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都内国立大学にて、研究・産学連携コーディネーターを9年間にわたり担当。
大学の知財関連の研究支援を担当し、特にバイオ関連技術(有機化学から微生物、植物、バイオ医薬品など広範囲に担当)について、国内外多数の特許出願を支援した。大学の先生や関連企業によりそった研究評価をモットーとして、研究計画の構成から始まり、研究論文や公募研究への展開などを担当した。また日本医療研究開発機構AMEDや科学技術振興機構JSTやNEDOなどの各種大型公募研究を獲得している。
名古屋大学大学院(食品工業化学専攻)終了後、大手食品メーカーにて31年間勤務した経験もあり、自身の専門範囲である発酵・培養技術において、国家資格の技術士(生物工学)資格を取得している。国産初の大規模バイオエタノール工場の基本設計などの経験もあり、バイオ分野の研究・技術開発を得意としている。
学位・資格
博士(生物科学):筑波大学にて1994年取得
技術士(生物工学部門);1996年取得