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論文執筆の注意点!準備・執筆方法、投稿・査読まで解説

2024/10/7
研究・論文

最新のイノベーション成果を発表する学術論文が注目を集めています。

科学技術分野にかぎらず、人文社会系などにおいても、論文は著者の研究成果を発表する重要な機会です。

国際的な学術誌のみならず和文による学術雑誌で、研究者は自身の研究成果やその考察などを公開しています。このような状況において、論文投稿にまだあまり慣れていない場合は、その後の査読プロセスなど、気になる点も多いのではないでしょうか。

本記事では、論文執筆にあたって注意すべきポイントや、具体的な執筆方法、投稿・査読の段階までくわしく解説します。

論文執筆とは?

研究者にとって、研究成果を公開する論文執筆とはそもそもどのようなものでしょうか。

ここでは論文執筆の目的や対象などについて、まず説明します。

論文執筆の目的

学術雑誌に論文を発表することは、研究者にとって重要な作業といえるでしょう。

研究を開始して間もない人や、経験豊富な研究者にとっても、研究者としては論文発表を行う作業自体が大切なプロセスとなります。

論文とは、研究対象に関して、これまでの実験結果を明らかにして、自身の考え方や見解を示すと共に、それに基づいた研究成果をもとに、その考え方の内容の妥当性を、論文として表現するものです。

人文科学分野では、テーマとして、論文執筆前の「問い」に対して、著者の見解としての「答え」が記載されていればよい、とする考え方もありますが、通常の研究論文では、「問い」と「答え」の間の「実験計画」や「実験結果」が重要な要素となります。

論文執筆後、論文投稿・査読といった一連のプロセスのあとにはなりますが、その研究を広く公開して認めてもらうことが出来ます。

研究開始して間もないときほど、自身の成果が掲載された学術雑誌をみることは研究者冥利ともなります。

論文執筆の種類と対象

学術雑誌にもよりますが、報文(通常の論文)以外に、研究ノートや報告、総説など、論文を投稿するときの区分がある場合があります。

「報文」は、先行研究も確実に調査したのち、自身の論文を、新規性・独創性・完成度などの観点をふまえて、しっかりと執筆しなければなりません。本記事では、特に記載がない場合は、この報文を例にとり説明しています。 

なお「研究ノート」は、独創性や完成度はやや落ちる場合がありますが、新規性の高い場合にすぐその成果を発表するものとなります。

「報告」は、独創性があまり必要のない場面で、有用な情報を公開するものとなります。

また「総説」は、通常の場合は既存の論文をまとめて、さらに著者の見解も加えて執筆するものです。

論文執筆前に準備すべきこと

 執筆する論文の構成の内容や、準備すべきことについて説明します。

論文の構成

論文の構成には、大まかにわけると、要旨、序章、本論、終章、参考文献といった区分けがありますので、これをふまえて執筆します。重要な本論の部分には、実験方法やその結果が記載されていることが必要です。

人文科学分野では、テーマとして、論文執筆前の「問い」に対して、著者の見解としての「答え」が記載されていればよい、とすることも場合によってはありますが、通常の研究論文では、問いと答えの間の、実験方法や実験結果が重要な要素となります。

科学論文のみならず、人文科学分野の論文でも論文の構成を知り、それに沿って執筆する必要があります。 

執筆前の準備

論文執筆については、既に研究計画において組み込まれていることも多く、その段階にそって執筆作業を実施します。

特にすぐ執筆開始するのではなく、執筆の際の設計図ともなる、研究論文のアウトラインを作成しておく方がベターです。

論文アウトラインについては、「(仮)タイトル⇒ 序文⇒ 実験方法⇒ 実験結果⇒ 考察⇒ 要旨」の順に、作成します。実験方法や実験結果があれば、すぐ執筆開始できると思われがちですが、段階をふんで準備して行く方が完成度が高く、論文の質も高くなります。いきなり論文作成を開始すると、完成した論文が本人が最初意図していたものと異なる可能性もあります。

英語論文の執筆

最近は、和文の論文より英語論文の方が、論文の主流となっています。また独創性の高い論文ほど、海外の有名雑誌への投稿が、従来から重視されています。

英語論文の執筆の場合は、完成した和文論文から翻訳するより、できれば最初から英語で執筆することをおすすめします。

通常の場合、研究計画設定段階で、すでに多数の論文を読み込んでから、当該研究を実施する流れになっています。最新の英語論文を検索や購読して、研究背景を設定する場合が多いので、日本語に訳すより、英語で要旨を箇条書きにしておく方が便利です。英語で箇条書きにしておけば、論文アウトラインの作成や、最終的な論文の本文作成にも役に立ちます。

英語で考察すると、あいまいな部分がない訳ではないですが、かなりの部分が低減されることになります。また箇条書きの英文が既にあれば、多少修飾語を多くしても、英文自体の論理性はそのまま保たれるメリットがあります。結果的に、英文本文の作成時にも非常に役立ちます。

論文の執筆

準備作業が終了すれば、論文の執筆にとりかかります。

自然科学系の論文では、序文(研究背景)、実験方法、実験結果、考察などについて、順をおって記載していきます。

なお、投稿する学術雑誌の「投稿要領」は執筆前に全て確認しておき、問題ないようにすることが大切です。

タイトル

タイトルは、研究論文の内容を簡潔にもっともよく反映するところです。

当該分野の研究者がみて、是非読んでみたいと思うようなタイトルにする必要があります。このため当該のキーワードや関連用語などを含めて、簡潔かつ必要十分なタイトルとします。

場合によっては、仮にタイトルを作成しておき、論文執筆をすすめ、論文が完成した段階で、さらにタイトル修正を検討します。あまり長いタイトルの場合は、読者には歓迎されません。

著者

当該研究に関与した研究者を、著者として記載します。

著者が複数の場合は、通常、研究の遂行に最も貢献した人を、第一著者とします。

また、著者を代表として、当該論文の責任を負う人(Coresponding Author)も印を付けるなどして記載しておきます(投稿要領に従う)。なお研究補助者などに感謝の気持ちを伝えたい場合は、論文の「謝辞」の項目に記載します。

抄録とキーワード

学術雑誌の購読者は、タイトルに加えて、抄録(Summary)の内容にも注目します。

抄録は、論文全体の概要を示す部分でもあり、研究論文でも一番重要なポイントが記載されています。各種論文の抄録ばかりを集めて、再編集される文献も多数あり、いわゆる論文のキーワードを含め、自身の研究により、得られた成果を過不足なく網羅していることが大切です。日本語の論文では、400文字程度が一般的です。

また、キーワードを別に記載する欄がありますので、そこに適切なキーワードを記載します。論文公開後、文献検索時の選択を左右する大切な用語となります。類似の研究論文もみて、過不足なく重要なものを選びます。なお学会によっては、日本語論文であっても、キーワードのみは「英語」という場合がよくあります。

序文

研究論文を執筆するに至った課題の背景を記載するとともに、その課題を解決するための当該研究の目的を記載します。

本論の前の部分ですが、当該論文の背景を関連論文から示す部分です。また重要な参考文献についても、必ず記載しておく必要があります。

というのは、査読審査などの段階で、関連論文の調査が十分実施されているか、確認するようになっている学会も多いためです。当該研究に関する「問い」と「答え」に関連する研究テーマについても、できれば記載されていることが大切です。読者にとっては、論文の著者がどのようなテーマでこの論文を作成したのかが理解しやすくなります。

研究背景や目的は、簡潔且つ十分な内容で、記載します。

特に研究背景は重要な個所で、当該論文以外にも「研究計画」全体にも関与する部分となります。

実験方法

実験方法も、学術論文の構成上、重要な項目となります。

参照論文の実験方法をそのまま実施した場合は、その論文を記載して、方法の記載を省略することも可能です。

但し、実験方法を一部改変したり、また実験対象が違うことがほとんどですから、それを記載します。装置系の論文では、実験に使用する装置の測定精度の情報などは大切なポイントです。なお統計処理なども適切に実施し、使用した処理ソフト(学術面で使用されるもの)の記載なども必要です。

実験系の開発などでは、実験機器の使用目的などを記載しておきます。よくある例としては、物理系実験で既に使用されている機器や装置を、バイオ系の実験などに適用するといったこともあります。実験装置の適用対象が従来と異なるときなども、新規性のある研究ですので、箇条書きで記載しておくようにします。

実験系の手順をデザイン化しておくことも、かなりの論文で見かけます。たとえば、医療系の論文では、患者への投与計画がその効能をしめす場合に大切なポイントとなります。わかりやすくなるので、これらを作成しておけば、研究計画の説明等の場面でも利用できます。

実験方法は、脇役の感じもある個所かと思いますが、実際はかなり重要な箇所で、これをおろそかにした論文は成り立ちません。

場合によって、実験方法が異なると、別の結果がでてしまう可能性もかなりあります。特にバイオや医療系などの論文では、実験方法の開発自体が問題となっている分野が数多くあります。また宇宙物理などの分野では、実験方法である観測系の設定・確立自体が、大切な課題です。

ノーベル賞級の研究で、実験方法の開発が鍵となった例は数多くあります。

実験結果

実験結果は、論文のキーとなる部分であり、明確に記載しておきます。

なお記載方法は、過去形でおこない、実験結果の考察や解釈は、「考察」の項目で実施します。

「研究ノート」などの短い論文では、実験結果と考察を一緒に記載する場合もあります。

実験ノート等を参照しながら、過不足なく箇条書きで論理的な展開にそって記載します。

また実験データ、特にグラフや表などの作成も重要ですが、同一データを、図と表の両方に使用することは避けます(査読で重複と判断される)。また図表の掲載時には、対象実験(コントロール)やバックグラウンドのデータも必ず記載します。実験結果の項目でも記載した、統計処理については的確に使用して記載することが大切です。

どの図表を載せるかは、当該論文のタイトルや主題にそって選択します。たとえば、実験系の開発においては、標準物質の測定データと目標とする対象物の測定データなどはかならず両方とも載せておきます。

考察

研究結果の考察は、自身の考えを記載できる一番重要な部分です。

序文で紹介した他の参考論文との整合性や、自身の研究目的がどのように達成できたのか、具体的に説明します。

なお本文執筆前に、記載したい考察結果を明確にしておき、箇条書きで記載しておくこと、非常に役にたちます。実際の研究論文執筆時には、この箇条書きをみながら執筆していきます。

また総説論文ともいわれる、自身の複数論文や関連研究者の論文を総合的にまとめる場合でも、執筆前の準備をしっかりしてから、考察の執筆に取り組むことが大切です。

謝辞と参考文献

謝辞と参考文献の記載も、論文にはかかせないポイントです。

研究補助者などで感謝の気持ちを伝えたい場合は、謝辞に記載します。その他、研究指導者や、バイオ系ではよくありますが、研究開始の発端となった材料や試料などの提供者への感謝を、謝辞にかならず入れます。また研究補助金などの研究費の支援を受けた場合も同様です。官公庁からの補助金でも、研究論文執筆時には必ず記載するよう、義務付けているところもあります。

参考文献は、実験方法や考察に関連する研究論文を、自身及び他の研究者を含めて、網羅的に検索して明記します。いわゆる論文検索の手法で、関連の参考文献を適切に過不足なく、全て記載する必要があります。なお科学系のサイトなら大丈夫なところも多いですが、いわゆる一般のサイトからの資料引用は避けるようにします(論文査読時に問題となることもあります)。

図表と写真

実験結果の項目でも触れましたが、最後に、掲載する図表と写真の注意すべきポイントも説明します。

図表データの統計処理の妥当性は当然ですが、論文掲載時には、オリジナルで、且つ明瞭な図表や写真を提出します。論文の投稿受

理後に、元のファイル提出を義務付けているところもあります。また学術誌によっては、モノクロ印刷のみという場合もあり、特にバイオ系では試料写真がみえにくくなることがあります。カラー写真の場合は、一度モノクロで印刷してみて、明瞭にポイントとなる試料が印刷されるかなどを確認しておくことも大切です。

論文執筆後に留意すべきこと

論文執筆後には、重要な投稿・査読プロセスが待っています。

投稿・査読において、留意すべき点についてまとめました。

執筆原稿の確認と投稿

執筆原稿の確認は大切で、自身での確認後、できれば指導教官や他の研究者にもみてもらうようにします。自分ではなかなか気づかない癖とか、言い回し表現などもあります。

仮につけておいたタイトルと抄録は、論文完成後にも最終の修正や調整をおこないます。投稿する学会の投稿要領も再度確認の上、論文を投稿することが大切です。

なお研究成果の報告としては、特許申請なども考えられ、知財面では重要な場合もあります。このような場合には、論文執筆と特許申請の両方に取り組む必要があります。ただ科学技術分野にかぎらず、人文社会系などにおいても、論文は著者の研究成果を発表する重要な機会ということはかわりません。

論文の査読

論文投稿後、査読者(複数)によって、論文の評価が行われます。

通常の場合、評価のポイントは論文の完成度は当然ですが、新規性、有用性、信頼度などの観点から評価されることが多いようです。なお査読者の氏名は公開されず、論文執筆者にもわかりません。複数の査読者の評価結果をもとに、編集委員会で審査が行われ、受理、修正必要、却下などの判断がくだされます。

一般的には、一部修正などの連絡がある場合が多いので、この場合には、査読者の指摘事項に基づき、論文本文の修正や、場合によっては追加データなどの提出も行います。

査読者の誤解によるときもあるので、その場合は適切な説明の書類を提出します。なおやりとりも複数回にわたる場合もあります。特に英語論文では、英文でのやりとりになりますので注意が必要です。研究開始して間もない場合は、指導教官などにもみてもらうようにします。

一般的には、複数回のやりとりの後、はれて論文受理となります。

まとめ

研究者にとっては、研究論文が受理され学術雑誌に掲載されて、はじめて自身の研究成果と言えることとなります。

このように大切な論文執筆ですが、研究開始して間もないときはあまり慣れていないことが多いのではないでしょうか。特に最初の執筆の場合は、いろいろ配慮することも多く、気が休まらないかもしれません。

特に論文の考察部分は、序文に記載した参考文献も十分考慮して、自身の論文テーマと今回の実験結果をあらためて検証する部分であり、投稿後の査読でも重視されます。

本記事では、論文執筆にあたっての注意点や、執筆方法、投稿・査読の段階について解説しました。

研究論文の作成やその準備にあたっている研究者のみなさまのお役に立てば幸いです。

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