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システマティックレビューとは?考え方と書き方を徹底解説

2024/9/26
研究・論文

システマティックレビューは、特定の研究課題に関する既存の知識を網羅的に収集・分析し、客観的に評価・統合する強力な研究手法です。従来の文献総説とは異なり、明確な方法論に基づいてエビデンスを収集・評価するため、質の高い結論を導き出すことができます。本記事では、システマティックレビューの基礎知識から、実践的な執筆テクニック、投稿までの道のりを、幅広い分野の研究者や学生向けにわかりやすく徹底解説します。

システマティックレビューの基礎知識:定義、重要性、種類

代替テキスト システマティックレビューの基礎知識:定義、重要性、種類

システマティックレビューとは?定義と目的

システマティックレビューとは、ある研究テーマに関して、過去に行われた複数の研究論文を網羅的に収集し、一定の基準に基づいて評価・統合することで、より信頼性の高い結論を導き出す研究手法です。従来の文献総説とは異なり、明確な方法論に基づいてエビデンスを収集・評価するため、主観的な偏りを最小限に抑え、客観的で再現性の高い結論を得ることが可能となります。

システマティックレビューの主な目的は以下の通りです。

  • ある研究テーマに関するエビデンスを網羅的に収集し、その質を評価すること
  • 質の高いエビデンスを統合し、より信頼性の高い結論を導き出すこと
  • 研究分野における現状と課題を明らかにし、今後の研究の方向性を示すこと

従来の文献レビューと異なり、システマティックレビューは厳密な方法論に基づき、以下のような手順で実施されます。具体的には、

  • 明確な研究課題の設定
  • 包括的な文献検索
  • 客観的な文献選択と評価
  • データの抽出と統合

この手法の重要性は、医学分野をはじめとして教育、心理学、社会学など、様々な学術分野で広く認識されています。

例えば、コクラン共同計画では、ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い臨床研究を対象としたシステマティックレビューを多数作成し、医療従事者や患者に対して、より信頼性の高い医療情報を提供しています。

また、教育分野では、Campbell Collaborationが教育政策や実践に関するシステマティックレビューを実施し、エビデンスに基づく意思決定を支援しています。

このように、システマティックレビューは様々な学術分野で活用され、研究の質向上と知見の統合に貢献しています。

なぜシステマティックレビューが重要なのか?

システマティックレビューは、学術研究において極めて重要な役割を果たしています。その重要性は、以下の点に集約されます。

  • 膨大な研究結果を効率的に統合し、体系的な知見を得ることができる: システマティックレビューは、明確な基準に基づいて論文を収集・評価するため、研究者が膨大な論文を一つ一つ評価する労力を大幅に削減することができます。
  • エビデンスの質を評価し、信頼性を判断することができる: システマティックレビューでは、研究デザインやバイアスのリスクなどを評価することで、エビデンスの質を客観的に判断できます。
  • 研究分野における現状と課題を明確化し、今後の研究の方向性を示すことができる: システマティックレビューを通じて、既存の研究で明らかになっている点、まだ十分に研究されていない点が明確になるため、今後の研究の指針を示すことができます。

例えば、医学分野においては、システマティックレビューは、根拠に基づく医療 (EBM) の実践と診療ガイドラインの作成の基盤として、重要な役割を担っています。 これは、多くの医学的介入の有効性と安全性を評価するために、システマティックレビューが広く行われているためです。

さらに、システマティックレビューは、学術研究全体の質向上にも貢献します。厳密な方法論に基づいて実施されるため、研究の透明性と再現性が高まり、学術的信頼性の向上につながります。

このように、システマティックレビューは、学術研究の発展と実践への応用において不可欠な手法となっています。

システマティックレビューの種類と適用分野

システマティックレビューは、その手法や目的によっていくつかの種類に分けられます。大きく分けると、質的システマティックレビュー、量的システマティックレビューと混合研究法システマティックレビューがあります。

  • 質的システマティックレビューは、複数の研究結果を統合する際に、統計的手法を用いず、言葉によって分析・解釈する手法です。エビデンスの量が少ない場合や、研究結果にばらつきが大きい場合に適しています。
  • 量的システマティックレビューは、統計的手法を用いて、複数の研究結果を統合し、より定量的な結論を導き出す手法です。特に、メタアナリシスは、統計的手法を用いて複数の研究結果を統合し、効果量を算出することで、より高い精度で効果を検証する手法です。
  • 混合研究法システマティックレビューは量的・質的両方のアプローチを組み合わせて包括的な分析を行います。

システマティックレビューは、医学・医療分野だけでなく、教育、心理学、社会学など、幅広い分野で活用されています。

例えば、医学分野においては、根拠に基づく医療 (EBM) を推進するために、様々な治療法や検査法の有効性や安全性を評価するためにシステマティックレビューが広く行われています。 また、教育分野においても、特定の教育方法の効果を検証するために、システマティックレビューが用いられています。

このように、システマティックレビューは、エビデンスに基づいて意思決定を行う上で、必要不可欠なツールとなっており、その種類と適用方法を適切に選択することで、研究課題に対する信頼性の高い知見を得ることができます。

システマティックレビューの実施手順:計画から分析まで

代替テキスト システマティックレビューの実施手順:計画から分析まで

研究課題の設定とプロトコルの作成

システマティックレビューは、明確な研究課題(リサーチクエスチョン)と、それを達成するための詳細な手順を記したプロトコルに基づいて行われます。

まず、研究課題の設定 では、PICOPECO の形式を用いることが一般的です。

  • PICO は Patient(患者), Intervention(介入), Comparison(比較), Outcome(アウトカム) の頭文字をとったもので、介入研究の研究課題を設定する際に用いられます。
  • PECO は Patient(患者), Exposure(曝露), Comparison(比較), Outcome (アウトカム)の頭文字をとったもので、観察研究の研究課題を設定する際に用いられます。

例えば、「インプラントオーバーデンチャーによる補綴治療」と「全部床義歯」を比較する研究の場合、「無歯顎患者(P)において、インプラントオーバーデンチャーによる補綴治療(I)は、全部床義歯(C)と比べて、咀嚼能力(O)が高いか?」のようにPICO形式で研究課題を設定します。

次に、プロトコルを作成します。プロトコルは、システマティックレビューを系統的に実施し、透明性を確保するために非常に重要です。プロトコルには、以下のような項目が含まれます。

  • 研究の背景と目的
  • 研究課題(PICO/PECO)
  • 文献検索方法(データベース、検索キーワード、検索期間など)
  • 研究の選択基準と除外基準
  • データ抽出項目
  • バイアスリスク評価方法
  • データ統合・分析方法

プロトコルを作成することで、研究の全体像を明確化し、研究の質を向上させることができます。また、プロトコルを事前に登録公開することで、研究の重複を避けることができます。プロトコルの登録サイトとしては、PROSPERO (国際的なシステマティックレビュープロトコル登録システム)などがあります。

網羅的な文献検索と選択

システマティックレビューの信頼性は、網羅的かつ再現性の高い文献検索によって担保されます。 文献検索では、研究課題に関連する論文を、あらかじめ定めた検索方法と選択基準に基づいて、漏れなく、かつ偏りなく収集しましょう。

まず、検索対象とするデータベースを決定します。医学分野では、PubMed, MEDLINE, Cochrane Library が主要なデータベースとなりますが、 その他の分野では、Web of Science, Scopus, ERIC, PsycINFO など、分野に特化したデータベースを利用します。

次に、検索キーワードを決定します。PICO/PECO の各要素に対応するキーワードを組み合わせることで、より精度の高い検索が可能になります。 キーワードは、類義語や関連語も考慮し、網羅的に設定することが重要です。

さらに、検索期間言語研究デザインなどの条件を設定することで、対象となる論文を絞り込みます。

文献検索で得られた論文は、選択基準除外基準に基づいてスクリーニングを行います。 まず、タイトルと抄録に基づいて、明らかに選択基準を満たさないか除外基準に該当する論文を除外する一次スクリーニングを行います。 次に、一次スクリーニングを通過した論文について、全文を読み込み、選択基準を満たすかどうかを判断する二次スクリーニングを行います。 スクリーニングは、複数人で行うことで、選択の客観性透明性を確保することが重要です。

具体例として、Cochrane Reviewsでは、検索プロセスの透明性を確保するため、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)フローダイアグラムの使用が義務付けられています。このダイアグラムは、文献の特定から最終的な選択までの過程を視覚的に示すものです。

このように、包括的な文献検索と選択は、システマティックレビューの質を決定する重要なステップです。

論文の選定とデータ抽出

システマティックレビューでは、文献検索で得られた論文から、選択基準と除外基準に基づき、実際にレビューに用いる論文を 選定 します。この過程は、バイアス を最小限に抑え、信頼性の高いレビューを作成するために非常に重要です。

論文の選定は、通常、複数人 が独立して行います。まず、タイトルと抄録に基づいて、明らかに除外基準に該当する論文を除外する 一次スクリーニング を行います。次に、一次スクリーニングを通過した論文について、全文を読み込み、選択基準を満たすかどうかを判断する 二次スクリーニング を行います。

選定された論文から、必要なデータを抽出します。データ抽出は、事前に作成したデータ抽出シートなどを用いて、統一的な方法で行うことが重要です。 抽出するデータには、以下のようなものがあります。

  • 研究デザイン
  • 研究対象者(年齢、性別、疾患など)
  • 介入内容(種類、期間、量など)
  • 比較対象
  • アウトカム(評価項目、測定方法、結果など)

データ抽出も、複数人で行うことで、客観性 を担保します。 意見が異なる場合は、議論 を重ねて、最終結論を導きます。Cochrane Reviewsでは、データ抽出の信頼性を高めるため、少なくとも2名の研究者が独立してデータ抽出を行い、結果を照合することが義務付けられています。この方法により、データ抽出の正確性と一貫性が確保されます。

このように、論文の選定とデータ抽出は、システマティックレビューの質を決定する重要なプロセスです。

論文の質評価

システマティックレビューに用いる論文は、その質の評価が不可欠です。質の低い論文を含めてしまうと、レビュー全体の信頼性が損なわれてしまうためです。論文の質評価は、研究デザインやデータの収集・分析方法などを考慮し、バイアスリスクを評価する形で行います。

バイアスリスクとは、研究の結果が真の結果からどれだけずれているかを表す指標で、選択バイアス、実行バイアス、検出バイアス、報告バイアスなど、様々な種類のバイアスがあります。 システマティックレビューでは、これらのバイアスリスクを評価するための標準的なツールを用いることが一般的です。

バイアスリスクの評価ツールとしては以下のものが広く使用されています。

  • ランダム化比較試験:Cochrane RoB 2ツール
  • 非ランダム化介入研究:ROBINS-Iツール
  • 観察研究:NOS(Newcastle-Ottawa Scale)

質評価も、データ抽出と同様に、複数人が独立して行うことが推奨されます。評価結果に食い違いがあった場合は、議論を通じて最終的な評価を決定します。

具体例として、Cochrane Reviewsでは、RoB 2ツールを用いてランダム化比較試験の質評価を行っています。このツールは、ランダム化プロセス、意図した介入からの逸脱、欠測アウトカムデータ、アウトカム測定、結果の選択的報告の5つのドメインでバイアスリスクを評価します。

このように、論文の質評価は、システマティックレビューの結果の信頼性を高める上で不可欠なプロセスです。

システマティックレビューの結果統合と解釈:エビデンスの統合

代替テキスト システマティックレビューの結果統合と解釈:エビデンスの統合

質的統合

質的統合は、システマティックレビューにおいて数値データを用いない定性的な研究結果を総合的に分析する手法です。メタ分析のように統計的手法を用いるのではなく、言語を用いて結果を統合していくため、データの解釈を重視するのが特徴です。

この方法は、特に以下の場合に有効です:

  • 複雑な介入の効果を評価する際
  • 参加者の経験や認識を探る研究
  • 異質性が高く量的統合が適さない研究群

質的統合では、以下の手順で分析を進めることが一般的です。

  • 結果の整理: 各論文の研究結果を、事前に設定したアウトカム(評価項目)ごとに整理します。
  • 結果の比較: 各論文の結果を比較し、共通点や相違点、傾向などを探します。
  • 結果の統合: 共通点や相違点などを踏まえ、総合的な結論を導き出します。

質的統合は、特に介入方法やアウトカムの種類が多岐にわたる場合や、研究間の異質性が大きい場合に有効です。

質的統合の主な手法には、以下のものがあります。

  1. ナラティブ統合
    複数の研究結果を文章形式で要約し、共通点や相違点を説明する方法です。研究間の関係性や文脈を保ちながら、全体的な傾向や洞察を提供します。
  2. テーマ分析
    複数の質的研究から得られたデータを体系的に分析し、共通のテーマや概念を特定する手法です。これにより、研究全体を通じて繰り返し現れる重要な要素を明らかにします。
  3. メタエスノグラフィー
    複数の質的研究の結果を統合し、新たな解釈や理論を生み出す方法です。個々の研究の解釈を比較・翻訳し、より高次の概念や理論を構築することを目指します。

これらの手法は、量的データでは捉えきれない複雑な現象や文脈を理解する上で重要な役割を果たします。例えば、Cochrane Reviewsでは、「Qualitative Evidence Synthesis」という手法を採用し、質的研究の結果を系統的に統合して、政策立案者や実務者にとって有用な知見を提供しています。

量的統合(メタアナリシス)

量的統合(メタアナリシス)とは、システマティックレビューにおいて、収集した複数の研究結果を統計学的に統合し、個々の研究よりも高い精度で効果量を推定する方法です。

メタアナリシスでは、各研究の結果を統合する際に、その研究のサンプルサイズや結果のばらつきなどを考慮して重み付けを行います。 一般的に、サンプルサイズが大きく、結果のばらつきが小さい研究ほど、重みが大きくなります。統合された結果は、フォレストプロットと呼ばれるグラフで視覚的に示されることが多く、効果の大きさや信頼区間を一目で確認することができます。

メタアナリシスを実施する際は、以下の点に注意が必要です:

  • 研究間の異質性の評価
  • 適切な統計モデルの選択(固定効果モデルまたはランダム効果モデル)
  • 効果量の計算と統合
  • 出版バイアスの評価

研究間の異質性(heterogeneity)とは、研究のデザインや対象者、介入方法などが異なることで、結果にばらつきが生じることです。異質性が大きい場合は、メタアナリシスの結果の解釈が難しくなるため、異質性の原因を探る解析や、サブグループ解析などを行う必要がある場合もあります。

メタアナリシスは研究間の異質性が低く、統合が妥当と判断される場合にのみ実施すべきです。異質性が高い場合は、質的統合を選択することも検討しましょう。

統合の結果は、通常、森林プロット(フォレストプロット)で視覚的に表現し、個々の研究結果と統合結果を一目で把握できます。

メタアナリシスの実施には、Review Managerなどの専用ソフトウェアが利用可能です。これらのツールを使用することで、複雑な統計計算を効率的に行い、結果を視覚的に表現できます。

メタアナリシスは、エビデンスの信頼性を高め、より確実な結論を導き出すために強力なツールとなります。しかし、質の低い研究を含めてしまうと、メタアナリシスの結果も信頼性が低くなってしまうため、質の高い研究のみを用いることが重要です。

結果の解釈とバイアスの評価

システマティックレビューの結果解釈は、統合された結果だけを見るのではなく、研究間の異質性やバイアスを考慮することが、研究の信頼性と妥当性を確保する上で重要です。

この段階では、以下の点に注意を払う必要があります:

  • 統合された結果の臨床的・実践的意義の検討
  • 研究間の異質性の原因分析
  • 潜在的なバイアスの特定と評価

さらに、システマティックレビュー全体を通して、以下に挙げるような様々なバイアスの評価が重要です。

  • 選択バイアス: 研究対象の選択過程で生じる。特定の傾向を持った研究が、システマティックレビューに含まれやすくなるバイアス。
  • 実施バイアス:研究の実施過程で生じるバイアス。介入群と対照群で異なるケアが提供されるなど、研究条件の不均衡によって結果が影響を受ける可能性があります。
  • 検出バイアス:アウトカムの測定や評価に関連するバイアス。評価者が介入の割り当てを知っている場合、その知識が結果の解釈に影響を与える可能性があります。
  • 出版バイアス: 有意な結果が出た研究ばかりが出版されやすくなるバイアス
  • 報告バイアス: 研究者が都合の良い結果だけを報告してしまうバイアス

これらのバイアスを最小限に抑えるためには、網羅的な文献検索や、出版バイアスを評価するためのファンネルプロットの作成などが有効です。例えば、Cochrane Reviewsでは、これらのバイアスを系統的に評価するためのツールを使用しています。

結果の解釈は、これらのバイアスを考慮した上で行う必要があり、その限界についても明確に示すことが重要です。

システマティックレビューの執筆と投稿:レビュー発表を目指して

代替テキスト システマティックレビューの執筆と投稿:レビュー発表を目指して

レビューの構成と執筆方法: IMRaD形式 

システマティックレビューも、一般的な学術論文と同様に、IMRaD形式 に従って執筆します。IMRaD形式とは、レビューを以下の4つのセクションに分け、論理的な流れに沿って記述する構成です。

  • 序論 (Introduction): レビューの背景、目的、リサーチクエスチョンを明確に記述します。 なぜそのテーマのレビューが必要なのか、既存の研究ではどのような点が明らかになっていないのかなどを具体的に説明します。
  • 方法 (Methods): レビューに用いた方法を詳細に記述します。具体的には、文献検索の方法、選択基準と除外基準、データ抽出の方法、質評価の方法、データ統合の方法などを記述します。 方法を詳細に記述することで、レビューの透明性を高め、再現性を担保できます。
  • 結果 (Results): レビューの結果を客観的に記述します。選択した論文の特性、質評価の結果、統合された結果などを示します。 図表を効果的に用いることで、結果をよりわかりやすく示せます。
  • 考察 (Discussion): 結果の解釈、研究の限界、今後の研究への示唆などを記述します。 統合された結果の解釈だけでなく、研究の限界やバイアスについても考察すると、レビューの信頼性を高められます。

特に、Methodsセクションでは、PRISMA声明に準拠した詳細な記述が求められ、これにより、レビューの透明性と再現性が確保されます。

また、Resultsセクションでは、フローダイアグラムや森林プロットなどの視覚的要素を効果的に用いることで、結果の理解が促進されるでしょう。

IMRaD形式に従うことで、システマティックレビューの論理的な構成と明確な情報伝達が可能となります。

報告ガイドライン: PRISMA声明

システマティックレビューを論文として発表する際には、PRISMA声明 (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)と呼ばれる報告ガイドラインに従うことが重要です。 PRISMA声明は、システマティックレビューの報告に必要な項目を明確化し、レビューの透明性と質を向上させることを目的として、2009年に初版が発表され、2020年に更新されました。

PRISMA2020は、以下の要素で構成されています。

  • 27項目のチェックリスト
  • タイトルや要旨の書き方
  • 序論、方法、結果、考察の各セクションで記述すべき内容
  • 文献検索や選択、データ抽出、バイアス評価のプロセスを明確にするためのフローチャートの作成
  • 抄録用チェックリスト

このガイドラインに従うことで、レビューの透明性、再現性、信頼性が向上します。特に重要な点は以下のとおりです。

  1. 明確な研究目的の記述
  2. 包括的な検索戦略の詳細
  3. 研究選択と除外の基準
  4. データ抽出と質評価の方法
  5. 結果の統合と解釈

多くの学術雑誌が、システマティックレビューの投稿論文に対してPRISMA声明への準拠を求めています。 そのため、レビューを執筆する前に、投稿先の雑誌の投稿規定を確認し、PRISMA声明に沿った構成と内容で執筆しましょう。

PRISMA声明は、質の高いシステマティックレビューを作成するための手引きとしても有用です。 システマティックレビューの初心者の方は、レビューを計画する段階からPRISMA声明を参照することをお勧めします。

投稿ジャーナルの選定と査読対応

システマティックレビューを執筆したら、次は投稿ジャーナルの選定です。適切なジャーナルを選び、査読にしっかり対応することは、レビュー採択率を高める上で非常に重要です。

ジャーナルを選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

  • ジャーナルのスコープ: 投稿するレビューのテーマと、ジャーナルの掲載範囲が一致しているかを確認しましょう。医学系、工学系、人文科学系など、ジャーナルによって専門分野が異なります。
  • ジャーナルのインパクトファクター: ジャーナルのインパクトファクターは、そのジャーナルに掲載された論文がどれくらい引用されているかを表す指標です。インパクトファクターが高いジャーナルに掲載されると、レビューが多くの人に読まれる可能性が高まります。
  • ジャーナルの投稿規定: 投稿前に、ジャーナルの投稿規定をよく読み、レビューの構成や書式、参考文献のスタイルなどが規定に沿っていることを確認しましょう。 多くのジャーナルでは、システマティックレビューの投稿論文に対して、PRISMA声明への準拠を求めています。

ジャーナルを選定したら、レビューを投稿します。 投稿後は、査読者による査読を経て、採択・修正・棄却のいずれかの判定が下されます。 査読では、レビューの内容に関する様々な質問やコメントが寄せられます。

査読対応で成功するには、以下の点に注意しましょう。

  1. 査読者のコメントに対する丁寧かつ建設的な回答
  2. 修正箇所の明確な提示
  3. 修正できない点についての合理的な説明

査読コメントには、可能な限り真摯に対応し、レビューを修正しましょう。 査読コメントへの対応は、レビューの質を高めるだけでなく、査読者との建設的な議論を通じて、新たな視点を得る貴重な機会となります。

このプロセスを通じて、システマティックレビューの質を高め、学術コミュニティへの貢献を最大化してください。

最後に

本記事では、「システマティックレビューとは何か」について、その考え方と実践的な書き方を解説しました。システマティックレビューは、ある研究分野のエビデンスを網羅的に収集し、客観的な視点から分析・統合することで、より確実な結論を導き出すための強力なツールです。医学分野だけでなく、様々な学術研究分野でその重要性を増しています。

システマティックレビューの実施には、厳密な方法論と細心の注意が必要で、その結果は研究分野全体に大きな影響を与える可能性があります。PRISMA声明などのガイドラインを活用し、透明性と再現性の高いレビューを心がけましょう。

これからシステマティックレビューに挑戦する方は、ぜひ本記事で紹介した手法を習得し、質の高いレビュー執筆を進めてみてください。

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