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インパクトファクターとは?調べ方、評価指標、注意点を徹底解説

2024/12/26
研究・論文

「インパクトファクターが高い雑誌に投稿したいけれど、そもそもインパクトファクターとは?」、「論文の価値をインパクトファクターだけで判断していいの?」などとお考えですか?

インパクトファクターは、ジャーナルの権威を測る重要な指標の一つです。しかし、その意味や調べ方、注意点などを正しく理解することが重要です。

本記事では、インパクトファクターの基本的な概念から計算方法、そして研究評価における適切な活用方法まで、実践的な視点で解説していきます。

インパクトファクターの基礎知識

インパクトファクターの基礎知識

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インパクトファクターの定義と計算方法

インパクトファクター(IF)とは、学術雑誌が特定の期間内にどれだけの頻度で引用されたかを示す指標 です。一般的にジャーナルの権威や影響力を測るために用いられます。具体的には、過去2年間に出版された論文が、対象年にどれくらい引用されたかを示す数値です。

インパクトファクターは、Web of Scienceの過去2年分のデータから計算されます。具体的には、以下の計算式で算出されます:

IF=(対象年の前2年間に雑誌に掲載された論文が対象年に引用された回数)/(対象年の前2年間に雑誌に掲載された論文の総数)

例えば、2017年のNature誌のインパクトファクターは41.577でした。これは2015年と2016年にNature誌に掲載された論文が、2017年に平均で約42回引用されたことを意味します。計算式は以下の通りです。

2017年のIF=41.577=74090 / (880 + 902)

ここで、74090は2017年の引用回数、880は2016年の論文数、902は2015年の論文数を表しています。

一般的な学術雑誌では1〜2程度の値となることが多く、5以上で高評価、10以上であれば極めて影響力の大きいジャーナルとされています。

学術界における重要性と影響力

インパクトファクターは、学術雑誌の評価指標として広く認識されており、学術界に大きな影響を与えています。インパクトファクターが高いジャーナルは、その分野において高い評価と権威を持っていると見なされ、研究者が論文掲載を目指す重要なモチベーションになります。

インパクトファクターは、以下のような場面で重要な役割を果たしています。

  • 論文投稿先の選定:研究者は、自分の研究成果をより多くの研究者に読んでもらうために、インパクトファクターの高いジャーナルに論文を投稿しようとします。
  • 研究機関の評価:大学や研究機関の評価においても、所属する研究者がインパクトファクターの高いジャーナルにどれだけ論文を掲載しているかが、重要な指標として用いられることがあります。
  • 研究費の獲得:研究費の審査においても、研究計画の成果を掲載するジャーナルとして、インパクトファクターの高いジャーナルを挙げることで、採択の可能性を高める戦略をとる研究者もいます。

しかし、インパクトファクターはあくまでも指標の一つであり、それだけでジャーナルの質や研究の価値を完全に評価できるわけではありません。後述する注意点も踏まえ、インパクトファクターを適切に理解することが重要です。

ジャーナルの評価指標としての役割

インパクトファクターは、当初図書館員のジャーナル選定指標として考案されましたが、今日ではジャーナルの「質」を評価する指標として広く認識され、研究機関や研究者の評価にも用いられるようになっています。

これは、高いインパクトファクターを持つジャーナルは、より多くの研究者に読まれ、引用される可能性が高いという考えに基づいています。

IFは、以下の3つの重要な役割を果たしています:

  1. 研究者による投稿先の選定基準
  2. 研究機関による業績評価の判断材料
  3. 図書館による購読ジャーナルの選定指標

しかし、インパクトファクターをジャーナルの質の指標として用いることには、多くの問題点が指摘されています。例えば、以下のような点があります:

  • 分野間の比較ができない:分野によって論文の引用慣習が異なるため、分野が異なるジャーナルをインパクトファクターで比較することはできません。
  • 質の高い研究が必ずしも高IFジャーナルに掲載されるわけではない:実際には、画期的な研究成果が、必ずしもインパクトファクターの高いジャーナルに掲載されるとは限りません。
  • インパクトファクターを上げるための操作が行われることがある:ジャーナル側が意図的にインパクトファクターを操作するケースも報告されており、その信頼性が疑問視されています。

レビュー論文は一般的な研究論文よりも引用されやすい傾向も指摘されます。インパクトファクターは、あくまでもジャーナルの影響力を測る指標の一つとして捉え、他の指標と合わせて総合的に判断することが重要です。

インパクトファクターの調べ方

インパクトファクターの調べ方

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Journal Citation Reports (JCR)の活用法

インパクトファクターを調べる最も信頼性の高い方法は、Clarivate Analytics(クラリベイト・アナリティクス)社が提供するデータベース「Journal Citation Reports (JCR)」を利用することです。JCRは、Web of Scienceのデータに基づいて算出されたインパクトファクターや、その他のジャーナル評価指標を提供しています。

JCRへのアクセス方法は以下の通りです:

  • 所属機関のライブラリーウェブサイトからWeb of Scienceにアクセス
  • 「Journal Citation Reports」を選択
  • 「Browse by Journal」から調べたい雑誌名を検索

インパクトファクターは、以下のような方法で調べることができます。

  • 雑誌名を指定して検索:検索窓に調べたい雑誌名を入力すると、その雑誌のインパクトファクター、ランキング、引用情報などを確認できます。
  • 分野別にジャーナルを閲覧:JCRでは、ジャーナルを分野別に分類しており、特定の分野におけるジャーナルのインパクトファクターを比較することができます。
  • ジャーナルの詳細情報を閲覧:各ジャーナルのページでは、インパクトファクターの推移、引用情報、掲載論文の国別・機関別情報などを詳しく見ることができます。

JCRは、大学図書館などで契約されていることが多いので、所属機関の図書館にアクセス方法を確認してみましょう。毎年6月頃に前年のデータが更新されるため、最新の情報を確認する際は更新時期に注意が必要です。また、Clarivate Analytics社のウェブサイトでは、JCRの概要や活用方法に関する情報も提供されています。

Web of Scienceでの検索方法

学術論文データベースであるWeb of Scienceからも、インパクトファクターを調べることができます。Web of Scienceは、世界中の様々な学術雑誌の論文情報を収録しており、キーワードや著者名などから論文を検索できます。

Web of Scienceでインパクトファクターを調べるには、以下の手順に従います。

  • Web of Scienceのトップページにアクセス:「ジャーナル検索」タブを選択して入力する。
  • 論文を検索:調べたいジャーナルに掲載されている論文を、Web of Scienceの検索機能を使って探します。
  • 論文の詳細情報を開く:検索結果から論文タイトルをクリックし、論文の詳細情報ページを開きます。
  • ジャーナル情報を確認:論文の詳細情報ページには、「ジャーナル情報」という項目があり、そこにジャーナル名、ISSN、インパクトファクターなどが表示されます。

Web of Scienceは、多くの大学や研究機関で利用可能ですが、JCRと同様に有料データベースです。所属機関の図書館などにアクセス方法を確認しましょう。

また、検索結果は四半期ごとに更新されるため、最新のデータを確認する際は更新時期を確認することをお勧めします。

各ジャーナルの公式サイトでの確認方法

JCRやWeb of Scienceにアクセスできない場合でも、調べたいジャーナルの公式サイトでインパクトファクターを確認できることがあります。多くのジャーナルは、自誌のインパクトファクターを掲載情報として公開しています。

公式サイトでインパクトファクターを確認するには、以下の方法を試してみましょう。

  • ジャーナルのウェブサイトを直接訪問:目的のジャーナルのウェブサイトにアクセスし、「About」や「Journal Information」といったページを探します。多くの場合、インパクトファクターはこれらのページに記載されています。
  • インターネット検索エンジンを利用:Googleなどの検索エンジンで、「ジャーナル名 impact factor」と検索してみましょう。検索結果にジャーナルの公式サイトが表示され、インパクトファクターが記載されている場合があります。

例えば、Nature誌は、公式サイト上で「2023年におけるNatureのジャーナルインパクトファクターは50.5」と公開しています。

ただし、公式サイトの情報は最新でない場合や、そもそもインパクトファクターを公開していない場合もあります。そのような場合は、JCRやWeb of Scienceを利用するか、所属機関の図書館に問い合わせてみましょう。

インパクトファクターの評価基準

インパクトファクターの評価基準

代替テキスト  インパクトファクターの評価基準

分野別の標準的な数値

インパクトファクターは、分野によって論文の引用慣習が大きく異なるため、一概に数値だけで評価することはできません。

一般的には、インパクトファクターが1〜2程度のジャーナルが多いとされています。

しかし、分野によっては、標準的な数値が大きく異なります。例えば、

  • 医学・生命科学分野:トップジャーナルでは30を超えることもあり、5.0以上で高評価とみなされています。
  • 物理学・化学分野:医学・生命科学分野に比べるとインパクトファクターは低くなる傾向があり、2〜3程度のジャーナルが多いです。3.0以上で高評価です。
  • 人文・社会科学分野:論文の引用数が少ないため、インパクトファクターは1以下になるジャーナルも珍しくありません。1.0以上で高評価です。

JCRでは、ジャーナルを分野別に分類し、それぞれの分野におけるインパクトファクターの平均値や中央値などを確認できます。論文を投稿する際には、自分の分野における標準的な数値を参考にし、適切なジャーナルを選びましょう。

四分位数(Q1~Q4)による評価方法

インパクトファクターを相対的に評価する方法として、四分位数(Quartile)を用いる方法があります。JCRでは、各分野におけるジャーナルをインパクトファクター順に並べ、上位から4つのグループ(四分位)に分類しています。

  • Q1:上位25%
  • Q2:上位25%~50%
  • Q3:上位50%~75%
  • Q4:下位25%

四分位数は、ジャーナルの相対的な位置づけを示す指標となり、Q1に分類されるジャーナルは、その分野で特に影響力の高いジャーナルとみなされます。

論文を投稿する際には、目標とするジャーナルがどの四分位に属するのかを把握して、ジャーナル選択の際の判断基準にできます。

高インパクトファクタージャーナルの特徴

一般的に、インパクトファクターの高いジャーナルは、以下のような特徴を持つと言われています。

  • 厳しい査読基準:論文の質を維持するために、専門家による厳正な査読が行われています。
  • 高い新規性・影響力:掲載される論文は、学術界に大きな影響を与える可能性が高い、新規性の高い研究成果であることが多いです。
  • 幅広い読者層:その分野をリードする研究者や、世界中の研究機関に広く読まれています。
  • 優れた編集体制:論文の質を高めるために、専門性の高い編集者が、論文の構成や表現の改善を支援しています。

これらの特徴から、高インパクトファクタージャーナルに論文が掲載されることは、研究者にとって大きな名誉とされ、研究者としての評価向上や研究資金獲得にも有利に働くと言われています。

また、高インパクトファクタージャーナルでは、オープンアクセスポリシーの採用や、ソーシャルメディアでの研究成果の発信など、論文の可視性を高める取り組みも積極的に行っています。これらの要素が組み合わさり、掲載論文の高い被引用数につながっています。

しかし、インパクトファクターが高いジャーナルに掲載されることだけが、研究の価値を判断する基準ではないことに注意が必要です。研究の独創性や社会的なインパクトなど、多角的な視点から研究を評価することが重要です。

インパクトファクター活用の注意点

インパクトファクター活用の注意点

研究分野による数値の違い

インパクトファクターは、分野によって論文の引用慣習が大きく異なるため、単純な数値比較はできません。

この違いは主に以下の要因から生じています:

  • 研究者人口の規模の違い
  • 論文の引用パターンの違い
  • 研究成果が出るまでの時間の違い

例えば、2021年の分野別データを見ると、医学分野の『The New England Journal of Medicine』は91.245という極めて高い数値を示す一方、物理学分野の代表的なジャーナル『Physical Review Letters』は9.161となっています

医学・生命科学分野では、研究者人口が多く、論文発表数も多いため、インパクトファクターは高くなる傾向があります。一方で、人文・社会科学分野では、研究者人口が少なく、論文発表数も少ないため、インパクトファクターは低くなる傾向があります。

また、分野による引用の特徴も大きく異なります。医学や分子生物学では1論文あたりの引用数は多いものの引用期間は短く、数学では1論文あたりの引用数は少ないものの引用期間が長いという特徴があります。

このような分野特性の違いを考慮するため、近年では分野内での相対的な位置づけを示す四分位数(Q1〜Q4)による評価が推奨されています。これにより、より公平な分野間比較が可能となります

評価指標としての限界

インパクトファクターは、ジャーナルの影響力を測る指標として広く利用されていますが、万能ではなく、以下のような限界も存在します

  • 短期的評価に限定される(直近2年間のみ)
  • 分野による引用傾向の違いを反映していない
  • 総説論文と原著論文の区別がない
  • 自己引用や相互引用による操作が可能

特に問題なのは、個々の論文や研究者の評価指標として誤用されている点です。インパクトファクターはジャーナル全体の評価指標であり、掲載された個別の論文の質を直接反映するものではありません

また、研究の質を測る上で重要な以下の要素が評価できません:

  • 研究の再現性
  • 長期的な影響力
  • 社会的な有用性
  • 研究の独創性

このような限界を踏まえ、近年では研究評価にh-indexやAltmetricsなど、複数の評価指標を組み合わせて活用することが推奨されています。研究の質を適切に評価するためには、インパクトファクターのみに依存せず、多角的な視点からの評価が不可欠です。

代替評価指標との併用の重要性

インパクトファクターは、ジャーナルの影響力を測る指標として広く利用されていますが、その限界を理解し、他の評価指標と併用することで、より多角的な視点からジャーナルや論文を評価 できます。

近年、インパクトファクターのみに頼った評価の弊害が指摘されており、論文の質や研究のインパクトをより適切に評価できる代替指標が注目されています。

代表的な代替評価指標には以下のものがあります:

  • h-index:研究者個人の論文の被引用状況を直接評価
  • 5年インパクトファクター:より長期的な影響力を評価
  • EigenFactor:引用元のジャーナルの影響力を加味
  • CiteScore:Scopusデータベースに基づき、過去3年間の引用データに基づく包括的な評価
  • Altmetrics:ソーシャルメディアなど、従来の引用指標では捉えきれない論文の影響力を評価

これらの指標を組み合わせることで、研究の多様な側面を評価できます。例えば、h-indexは研究者の生産性と影響力のバランスを示し、Altmetricsは論文の即時的な社会的インパクトを可視化します。

また、Eigenfactor ScoreやArticle Influence Scoreなどの新しい指標は、引用元のジャーナルの影響力も考慮に入れた、より包括的な評価を可能にしています。

このように、複数の評価指標を適切に組み合わせることで、研究の質や影響力をより正確に把握できます。単一の指標に依存せず、研究分野や目的に応じて適切な指標を選択しましょう。

最後に

インパクトファクターに関する疑問は解消できましたか?

学術雑誌の影響力を測る指標であるインパクトファクターは、論文投稿先を選ぶ際などに参考になる一方で、万能な指標ではありません

研究分野による数値の違いや、評価指標としての限界を理解した上で、h-indexやAltmetricsなど、他の評価指標と組み合わせて活用することが重要です。

論文投稿先を選ぶ際は、インパクトファクターのみにとらわれず、

  • そのジャーナルが掲載している論文の内容
  • 研究の質や新規性
  • 出版までの時間
  • 社会への影響力

などを総合的に判断することです。

ぜひ今回の内容を踏まえ、自信を持って論文投稿を進めていきましょう。

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