ポスター発表は、若手研究者にとっては登竜門ともなりえる重要な場です。
初めての場合は、どのように実施したらよいか悩むことも多いのではないでしょうか。
口頭での学会発表と比べて、比較的容易に実施できるため、当該研究分野にあたらしく参加した人や、口頭発表ほど発表の分量が少ない場合には、よく実施されます。
ただ対面での実施となるため、考慮しておくべきポイントもあります。
本記事では、ポスター発表のやり方や注意点について詳しく解説します。
目次
ポスター発表は、通常、自身の研究内容をA0版程度のポスターにまとめて、学会発表時に持参・提示して、ポスターの前で、発表や質疑をおこなうものです。
口頭での学会発表と比べて、発表内容的にはそれほどの分量を必要としないため、比較的多くのポスター発表が実施されます。学会によれば、むしろポスター発表の方を口頭発表より多くしているところもあります。
口頭発表との違いをまとめると、次のようになります。
まずスライドをもちいる口頭発表にくらべ、大判ポスターを使用します。
当該の発表時間も、口頭発表が数十分から30分以上となる場合もあるのに対して、ポスターでは、数分程度の発表を、こまかく繰り返します。
もちろん、当日ポスターが展示されている時間内に、すべて常駐している必要はありませんが、繰り返しの発表により、結果的に、1回だけの口頭発表より、長時間にわたって発表実施することとなります。
口頭発表がひとりづつ実施するのに対して、ポスター発表では、当日同時に多数実施されます。
また質疑応答も、口頭発表では結果的にひとりづつなのに対して、ポスター発表では自由に意見交換する形式です。
このため口頭発表では、自身の研究内容を深く口述できますが、ポスター発表では、比較的短時間で、数多くの来場者との接点が直接に存在することになります。
ここではポスター発表における、事前準備のポイントについて紹介します。
まず学会での発表に対して、ポスター発表の申し込みをします。
かなり前に申し込みが必要な場合も多く、学会ごとに流儀なども違う場合もあります。その学会に詳しい研究室メンバーなどとも相談して実施しましょう。
発表用のポスターは、研究内容を簡潔に伝えるものとなります。
またポスター1枚で内容が理解できることが重要です。これらが重視されていれば、ある程度、自由にポスターを作成することができます。
ただし当該学会での発表がはじめての場合は、他の研究室メンバーや指導教官などにも、アドバイスをもらうのが重要です。あらかじめ作成後のポスターは、同じ研究室内であらかじめデモンストレーションとして、研究室メンバーにも確認しておきます。
ちょっとしたアドバイスをさらにもらうこともでき、そのアドバイスが後で有効だったということもありえます。
ポスター発表のデモは、日本人だけかと思われるかもしれませんが、米国などでもかなり綿密に練習(質疑応答を含む)しています。最近は違うかもしれませんが、かなりの時間を学会発表の練習に割いており、研究所の教授クラスでも練習することがあります。
また当該研究以外の分野のメンバーからの質疑応答が、結果的に自身の研究に役立つこことがあります(当該分野ではあたり前と思われる指摘が、研究進展につながることも考えれれます)。
また展示ポスター以外に、A4版で当該内容を印刷コピーしたものを用意しておくとかなり役に立ちます。特に英語での学会発表などは、これを利用することも可能です(口頭で発表しながら、印刷物を配布することもできます)。
聴衆によっては、1か所ではなく、他のポスターなど、できるだけ多くみてまわりたい人もいるからです。なお当該印刷物には、秘密保持上、実験データなどの詳細はあまり記載しない、ようにします(どうしても必要な人がいる場合は、当該印刷物に情報紹介先を記入して、学会後、個別に対応すればよいでしょう)。
ここではポスター作成時のコツについても解説します。
先ほど述べたように、まず複数のスライドで説明可能な口頭発表とは違い、コンパクトに自身の研究をつたえるものとなります。したがって実験方法などの紹介は最小限として、実験結果など強調したい項目を主体にします。もちろん実験方法の開発自体が、研究目的の場合は、方法論の方が重要です。
このため文章量はできるだけ少なくして、離れた場所からも見やすいフォントサイズにします(学会によっては、フォントサイズまで指定している場合もあります)。また文章と図表などのバランスをポスター内でうまく配置します。図表を下部に一括配置せず、ポスター内でバランスよくまとめましょう。
ある程度、図表やフォントの色や他の装飾も必要ですが、逆に当該学会の他のポスターから過度にはずれたようなポスターはやめた方がよいかと思います。
いろいろな商品展示会とは違いますので、あまりかけ離れたポスターは少ないようです。当該学会での通常の状況をしらない場合は、研究室メンバーなどに確認しておきます。
ここではポスター発表における、発表当日の流れについても紹介します。
学会当日は、なるべく早めにポスターを設置するようにします。
ときに周りのポスター発表が開始されているのに、これからポスター掲示作業を実施しているなどもありますが、これは発表のコツ以前の問題です。
早めに学会受付にて受付実施し、設置場所や設置・発表にあたっての注意事項なども聞いておきます(印刷物になっていたり、すでに学会誌で注意事項が記載されている場合もあり、あらかじめ確認しておきます)。
なおポスター設置以後は、いったん持ち場を離れて全体の様子(他のポスターなど)をみてまわるのも有効です。ポスター内容の確認や、自身の研究と特によく似ている例など、注目すべきポスターもあるからです。
ポスター発表時間が学会から設定されているので、その時間には持ち場にいるようにします。
論外ですが、だれも当該ポスターにいない(他の学会発表を聞いていたなど)ような状況はない、ようにします。
英語での発表などの場合、流暢な英語で実施する必要はありませんが、あらかじめ口頭内容は覚えておくようにします(実験データは、ポスター内に記載されているものを使用すればよいので無理に覚える必要はありません)。また先ほど記載したポスター展示内容での、A4版の簡易版を配布すればさらに効果的です。
学会の口頭発表とは異なり、ポスター発表では質疑応答はその場で実施することになります。
対面での応答となり、すぐ回答できる場合は、たいていはその項目だけを回答します。もちろん場合によっては、今後の研究で実施するときや秘密上、直接いえないときは、回答できない(Sorry、・・・)旨をいえば大丈夫です。
いじわるな質問や当該分野では秘密となりそうな実験方法やデータなどを無理に回答する必要はありません(ただし、間違った話はしないようにします。
場合によっては、今後の学会活動に支障がでることもあります)。日本人はたいてい親切に回答するといわれていますが、秘密保持面はとくに気をつけましょう。
学会後、必要がある場合は、直接メールなどで回答しておきます。
むしろ口頭発表より、ポスター発表の方がいろいろな聴衆とコンタクトする機会が多くなります。
たまに欧米系で、有名な研究者が直接質問してくることもあります。提出してもよいデータなどがある場合は、場合によっては回答することができます(これにより、学会中で、不特定多数の聴衆に回答することを防げます)。
場合によっては、当該研究室へ留学するチャンスにつながることもあります(もちろんその研究室が大丈夫な場合にしてください)。
初めての学会発表に人が来ないこともありますが、特に心配することはありません。
というのは当該分野の重要な研究者などの名前は、たいていの場合、すでに海外・国内の研究者ではよく知られています。
このため学会の聴衆者でも、次に用事があり急ぐ場合は、有名な研究室の内容だけをチェックしているときも多いからです。
ただ、ときにじっくり海外の研究者などが研究内容をみていることもあり、誠実に適切に対応しましょう(当該研究者からみれば、だれが新人研究者であるかはすぐわかります)。
初めての発表の場合の対策ですが、先ほども記載しましたように事前準備が特に大切です。というのは、2回目以降の場合は、かなりの事情がすでに把握できているからです。
特にポスター発表の事前練習や、ポスターチェックはかならず実施しておきましょう。また、手渡し用のポスター簡易印刷版は必ず準備しておくようにします。
指導教官や他の研究室メンバーにみてもらうことにより、自分では気づかなかったところをすぐ改善することができます。
はじめてでも多数の聴衆が来ることもありますが、たいていの場合は、あまり聴衆は多くありません。最初はあまり来ないものとして、聴衆の数が少なくても、堂々と口頭発表することが大切です。
最近は国内学会でも英語発表が多くなっていますが、てれずに流暢でなくてもよいので、しっかり発表するようにします。海外研究者も流暢な英語を聞きにくるのではなく、内容のある発表を期待しているので、じっくり構えて発表しましょう。
口頭発表では、大きめの声でしっかり発表するようにしましょう。英語の発表でも、流暢というより、簡潔なしっかりめの発表の方が好感が持てます。
ときに、はじめは聴衆が少なくても、継続しているうちにだんだんと聴衆が集まってくることはよくあります。SNSなどでの発表とは異なり、演説のように同じ文章でもよいので、根気よく繰り返すことが大切です。
ポスター発表のやり方や注意点について詳しく紹介しました。
口頭での学会発表と比べて、容易に実施できるため、比較的よく利用されます。
ただ当日は対面での実施となるため、考慮しておくべきポイントもあります。
ポスター発表においては、事前準備を念入りにしておく方が結果的にも大切です。
本記事が、特に初めてのためどのように実施したらよいか、検討されておられるみなさまのお役に立てば幸いです。
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都内国立大学にて、研究・産学連携コーディネーターを9年間にわたり担当。
大学の知財関連の研究支援を担当し、特にバイオ関連技術(有機化学から微生物、植物、バイオ医薬品など広範囲に担当)について、国内外多数の特許出願を支援した。大学の先生や関連企業によりそった研究評価をモットーとして、研究計画の構成から始まり、研究論文や公募研究への展開などを担当した。また日本医療研究開発機構AMEDや科学技術振興機構JSTやNEDOなどの各種大型公募研究を獲得している。
名古屋大学大学院(食品工業化学専攻)終了後、大手食品メーカーにて31年間勤務した経験もあり、自身の専門範囲である発酵・培養技術において、国家資格の技術士(生物工学)資格を取得している。国産初の大規模バイオエタノール工場の基本設計などの経験もあり、バイオ分野の研究・技術開発を得意としている。
学位・資格
博士(生物科学):筑波大学にて1994年取得
技術士(生物工学部門);1996年取得