論文投稿後、査読者からリバイス要請を受けても落胆する必要はありません。むしろ、これは論文を磨き上げ、アクセプトに向けて大きく前進できるチャンスです。査読コメントは、あなたの論文を客観的な視点からさらにブラッシュアップするための貴重なアドバイスです。
本記事では、査読結果への効果的な対応方法と、再投稿を成功させるための具体的なテクニックをご紹介します。リバイスプロセスを戦略的に活用し、より質の高い論文へと進化させる方法を学びましょう。査読者のコメントを味方につけ、研究成果の価値を最大限に引き出す方法をお伝えします。
英語論文を投稿した後、査読者によって4種類の評価を受けます。
Accept: 論文が修正無しで受理された場合ですが、非常に稀なケースです。
Minor Revision: 論文への軽微な修正要請です。 多くの場合、論文の内容をより明確にするための修正が求められます。 例えば、表現を明確にする、追加の説明を加える、などです。修正後に同じ査読者による再評価は行なわれず、ジャーナル編集者が最終的な判断を下します。
Major Revision: 論文には根本的な修正が必要だが、修正が認められればアクセプトされる可能性がある場合です。 査読者からは、追加のデータや分析を求められることもあります。諦めずに修正に取り組めば、アクセプトの可能性Minor Revisionとそんなに変わりません。
Reject: 論文がそのジャーナルに掲載するのにふさわしくないと判断された場合です。 リジェクトには、査読者に回される前にエディターによって却下される場合と、査読者による評価を経て却下される場合の2パターンがあります。 却下の理由としては、新規性や論理性がない、データの信頼性の低さなどが挙げられます。
Major Revisionの判定を受けると、論文の完成まで長い道のりのように感じ、不安になるかもしれません。しかし、Major Revisionは決して論文の投稿が失敗だったことを意味するものではありません。むしろ、論文をブラッシュアップし、アクセプトに近づけるための貴重な機会 です。
学術論文の査読プロセスは、質の高い研究を世に送り出すために非常に重要です。Elsevierのデータによると、2021年に投稿された論文のうちリバイスされたものは85.55%でした。 ほとんどの論文は厳しい査読プロセスを経て、リバイスを繰り返しながらアクセプトされるのです。
重要なのは、Major Revisionを乗り越えてアクセプトされる可能性は高いということです。Elsevierは、Major Revisionからアクセプトに至る確率は、Minor Revisionに対して、わずか16%程度しか減少しないという調査を報告しています。 査読者のコメントを真摯に受け止め、適切な修正を加えることで、アクセプトの可能性は高まります。
Major Revisionを成功させるためには、
といった点に注意することが重要です。
査読コメントは、あなたの論文の質をより高めるための、査読者からの貴重なメッセージです。論文を客観的な視点から評価し、改善点や疑問点を具体的に指摘して、論文の完成度を高めるための具体的なアドバイスです。
査読コメントは、時に厳しい表現が使われることもありますが、それは決してあなた個人への攻撃ではありません。 査読者は、より多くの読者に論文の内容が正しく伝わるように、論文の改善点を指摘しています。
査読コメントを読み解く際には、以下の点に注意しましょう。
査読コメントを建設的に捉え、論文の質向上に活かすことが、アクセプトへの近道です。
査読コメントへの対応方針を決めたら、次は Decision Letter で指定された再投稿期限 を確認しましょう。査読結果通知には、再投稿期限が記載されている場合がほとんどです。多くのジャーナルは、通常1〜3ヶ月の期限を設定しています。この期限は必ず守りましょう。
もし、期限内に再投稿が難しい場合は、 ジャーナルに延長を依頼 することができます。ジャーナルによっては、コメント対応に時間がかかりそうな場合、例えば、追加分析が必要な場合などは、事前に再投稿期限の延長が可能かどうかを問い合わせることを推奨している場合もあります。
例えば、Elsevierのガイドラインによると、延長依頼は通常、元の期限の75%が経過する前に行うべきとされています。また、多くの編集者は、合理的な理由があれば1〜2ヶ月の延長を認める傾向にあります。
では、具体的にどのくらいの期間で再投稿の準備をするべきでしょうか?
再投稿までのスケジュール例
上記のスケジュールはあくまで目安です。余裕を持ったスケジュールを立て、期日までに質の高い論文を再投稿できるように準備を進めましょう。
査読コメントへの対応方針と再投稿期限を確認したら、次はリバイスに必要な作業を洗い出し、スケジュールを立てましょう。
リバイス作業は、大きく分けて以下の3つの段階に分けられます。
各段階にかかる時間は、論文の内容や査読コメントの内容によって大きく異なります。 例えば、追加分析や本文の大幅なリバイスが必要な場合は、2〜4週間程度かかることもあります。 また、共著者と原稿の確認や英文校正、ネイティブチェック、最終確認なども考慮すると、さらに時間がかかる可能性があります。
余裕を持ったスケジュールを立て、期日までに質の高い論文を再投稿できるように準備を進めましょう。
査読コメントへの対応方針が決まり、論文原稿のリバイスを終えたら、レスポンスレターを作成します。レスポンスレターは、査読者との相互理解を深め、論文に対する評価を左右する重要な書類です。
読みやすく、分かりやすいレスポンスレターを作成するために、以下の点に注意 しましょう。
例えば、査読コメントを太字、それに対する回答を通常のフォントで記述し、さらに文頭に[Response]と入れることで、どこからが回答部分なのかを明確にします。
Excelシートの活用も効率的です。具体的には、以下の列を設けることが推奨されています:
レスポンスレターの冒頭で編集者と査読者への感謝の意を表すことも推奨されます。これにより、協調的な姿勢を示すことができます。
効果的なレスポンスレターを作成し、査読者からの理解と評価を得られるように、しっかりと準備を行いましょう。
査読コメント対応の際に、具体的にどのように修正すれば良いか迷うかもしれません。 効果的なリバイスには、相手を説得するための「根拠」と「変更点」を明確に示すことが重要です。
査読コメントへの対応は、「すべて受け入れる」、「一部受け入れる」、「反論する」 の3パターンに分けられます。
査読コメントへの対応は、アクセプトを得るための重要なプロセスです。 査読者の指摘を深く理解し、適切な対応をとることで、論文の完成度を高め、アクセプトの可能性を高めましょう。
査読者のコメントは論文改善の貴重な機会ですが、中には同意できないと感じるものもあるでしょう。重要なのは、感情的に反論するのではなく、冷静かつ論理的に、反論の根拠を示す ことです。
まず、査読者のコメントの意図を正しく理解 しましょう。 誤解に基づく指摘の可能性もあります。 その上で、なぜその指摘に同意できないのか、具体的な理由を明確に説明 しましょう。
反論の根拠としては、次のようなものが考えられます。
反論する際の表現は、あくまでも丁寧に、査読者を尊重した姿勢を心がけましょう。 例えば、「We appreciate the reviewer’s perspective, however… 」といった表現で始めると、柔らかな印象を与えられます。
査読者からのコメントの中には、どうしても反論せざるを得ない場合もあるでしょう。その際、感情的な反論ではなく、あくまでも丁寧に、しかし、反論の根拠を明確に示しましょう。
まず、査読者の意図を正しく理解し、誤解に基づく指摘でないかを確認しましょう。 その上で、反論する理由を、論文中の記述や参考文献、追加分析の結果などを用いて論理的に説明します。
反論する際の例文を以下に示します。
上記はあくまで例文であり、実際の表現はそれぞれの状況に合わせて変更する必要があります。重要なのは、査読者との建設的な議論を進めるという意識を持つことです。
反論する際の注意点 として、
などが挙げられます。
査読者も人間であり、誤解や見落としがある可能性もあります。反論する場合は、あくまでも論文の質を高めるための建設的な議論であることを意識し、冷静かつ丁寧な対応を心がけましょう。
せっかく論文を修正しても、その変更点が査読者に正確に伝わらないと、せっかくの努力が水の泡になってしまいます。 再投稿を成功させるには、修正内容を明確に伝えるためのテクニックが重要です。
具体的には、以下の3点を心がけましょう。
これらのテクニックを駆使することで、査読者に修正内容を正確に理解してもらい、再投稿の成功率を高めることができます。
論文リバイスが完了したら、最終稿を提出する前に必ず英文校正を行いましょう。 英文の誤りは、論文の信頼性を損なうだけでなく、査読者の心証を悪くし、論文の内容が正しく評価されない可能性があります。
英文校正は、単なるスペルや文法のチェックにとどまりません。
Edanzのブログによると、英文校正を利用した論文は、そうでない論文と比較して査読者からの評価が20%以上高くなるという調査結果があります。
例えば、ある生物学分野の研究者は、英文校正サービスを利用した後、以前は3回のリジェクトを経験した同じジャーナルに再投稿し、1回目の査読でマイナーリビジョンの判定を得たと報告しています。
英文校正サービスには、専門分野に特化したサービスや、投稿予定のジャーナルに合わせたサービスなど、様々なものがあります。あなたのニーズに合ったサービスを選び、高品質な論文を完成させましょう。
論文リバイスは、時に長く、困難な道のりとなることがあります。 査読者から厳しいコメントを受けたり、度重なる修正要求に心が折れそうになることもあるかもしれません。 しかし、諦めずに再投稿を続けることが、最終的なアクセプトへとつながります。
査読者のコメントは、論文の質を向上させるための貴重な意見と捉え、前向きに取り組みましょう。 査読者も人間です。時には誤解や見落としがある可能性も考慮し、反論する場合は、あくまでも論文の質を高めるための建設的な議論であることを意識することが重要です。
もし、最初のジャーナルでアクセプトに至らなかったとしても、論文の内容をブラッシュアップし、他のジャーナルへの再投稿を検討しましょう。 実際、多くの論文が、複数のジャーナルへの投稿を経て、最終的に出版されています。 大事なのは、諦めずに、粘り強く投稿を続けることです。
Nature誌の調査によると、トップジャーナルに掲載された論文の約75%が、最初の投稿先で却下されていました。
例えば、ノーベル賞受賞者のRandy Schekmanは、自身の画期的な研究論文が最初に却下された経験を共有しています。彼は諦めずに改善を重ね、最終的にCell誌に掲載され、その後のノーベル賞受賞につながりました。
論文リバイスは、アクセプトを勝ち取るための重要なステップです。査読者のコメントをしっかりと受け止め、論文の質を高めるための貴重な機会と捉えましょう。反論する場合も、丁寧な表現と明確な根拠を示すことが重要です。
修正内容を明確に伝えるためのテクニックを活用し、最終的には英文校正を行い、万全の体制で再投稿に臨みましょう。アクセプトまでの道のりは簡単ではありませんが、諦めずに再投稿を続ける心構えが、最終的な成功へとつながります。
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東大応用物理学科卒業後、ソニー情報処理研究所にて、CD、AI、スペクトラム拡散などの研究開発に従事。
MIT電子工学・コンピュータサイエンスPh.D取得。光通信分野。
ノーテルネットワークス VP、VLSI Technology 日本法人社長、シーメンスKK VPなどを歴任。最近はハイテク・スタートアップの経営支援のかたわら、web3xAI分野を自ら研究。
元金沢大学客員教授。著書2冊。