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日本人研究者が間違う論文英語:文法などの頻出ミス克服と和製英語の注意点

2025/5/5
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論文執筆は、研究者にとって重要なアウトプットの一つですが、特に英語で執筆する場合、多くの課題に直面します。文法や語彙のミスはもちろんのこと、日本人特有の英語表現である「和製英語」の使用は、査読者に誤解を与え、論文の評価を大きく左右する可能性があります。

本記事では、日本人研究者が陥りやすい論文英語の頻出ミスとその克服法、そして和製英語の落とし穴について詳しく解説します。これらのポイントを押さえ、より質の高い論文作成を目指しましょう。

日本人研究者が陥りやすい論文英語の頻出ミス

日本人研究者が陥りやすい論文英語の頻出ミス

主語と動詞の不一致

論文英語において常に意識すべきは、主語と動詞の数を一致させることです。しかし、複雑な文構造や複数形の扱いに迷うことで、この基本的なルールが疎かになるケースが見受けられます。

例えば、「気候変動の影響に関する最近の研究は、地球の気温の著しい上昇を示している」と述べたい場合に、“A recent study on the effects of climate change show a significant increase in global temperatures.”と書いてしまうことがあります。正しくは、主語である “study” が単数であるため、動詞も単数形の “shows” を用いるべきです。主語と動詞の不一致は、以下のような場合に特に起こりやすいです。

  • 句や節が主語となる場合:主語の中心となる名詞の数に合わせる必要があります。
  • 集合名詞:全体を一つのまとまりとして捉える場合は単数扱い、個々の構成員に焦点を当てる場合は複数扱いとなることがあります。

例えば、「委員会は会議の延期を決定した」と言う場合、“The committee have decided to postpone the meeting.” となりがちですが、委員会全体としての決定を示す場合は単数扱いとし、“The committee has decided to postpone the meeting.” とします。

一方で、「委員会のメンバーは、その件について異なる意見を表明した」のように、個々の構成員に焦点を当てる場合は、“The committee members have expressed different opinions on the matter.” と複数形を用いるのが適切です。

冠詞の誤用(a, an, the)

冠詞の使い分けは、英語学習者にとって長年の課題であり、論文英語においても例外ではありません。

「我々は水質汚染を観察した」と述べたい場合に、“We observed a water pollution.” と書いてしまうのは誤りです。物質名詞である “water pollution” は通常無冠詞で用います。冠詞の使い分けのポイントは以下の通りです。

  • a/an:特定されていない単数名詞を初めて言及する際に使用。
  • the:特定の、あるいは既に出てきた名詞を指す際に使用。
  • 無冠詞:複数形の名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞などには原則として不要。

具体的な誤用例と修正例は以下の表の通りです。

誤用例修正例説明
We observed a water pollution.We observed water pollution.物質名詞である “water pollution” は通常無冠詞です。
This study investigates the new method.This study investigates a new method.ここでは特定の手法ではなく、新しい手法の一つを指しているため “a” が適切です。
The Tokyo is a big city.Tokyo is a big city.固有名詞である都市名には通常冠詞は付きません。
We need to conduct a further research.We need to conduct further research.“research” は通常、特定の場合を除き無冠詞で用いられます。

例えば、データの複数形である “data” の扱いにも注意が必要です。「データは明確な傾向を示している」と言う場合、一般的には “Data show a clear trend.” と複数扱いにしますが、特定のデータを指す場合は “The data shows a clear trend.” となります。

単数形と複数形の混同

名詞の単数形と複数形の使い分けも、論文英語で頻繁に見られるミスの一つです。特に、数えられる名詞(可算名詞)と数えられない名詞(不可算名詞)の区別が曖昧だと、誤りが生じやすくなります。

「我々はいくつかのデータを分析した」と述べたい場合、“We analyzed several data.” とするよりも、“We analyzed several datasets.” とする方が学術論文としては適切です。

単数形と複数形の混同は、以下のような場合に起こりがちです。

  • 可算名詞と不可算名詞の区別:不可算名詞には原則として複数形はありません。
  • 不規則な複数形:“phenomenon” – “phenomena” のように、規則的でない複数形を持つ名詞があります。
  • 単数形と複数形が同じ形の名詞:“species” など、形が変わらない名詞も存在します。

具体的な誤用例と修正例は以下の表の通りです。

誤用例修正例説明
We analyzed several data.We analyzed several datasets.学術論文においては、”data” の複数形として “datasets” がより適切です。
The equipment are very expensive.The equipment is very expensive.“equipment” は不可算名詞のため、複数形はなく、単数扱いとなります。
We need more informations about this.We need more information about this.“information” は不可算名詞のため、複数形はありません。
The result shows two phenomenons.The result shows two phenomena.“phenomenon” の複数形は “phenomena” です。

例えば、「我々の研究はいくつかの魚の種に焦点を当てた」と言う場合、“Our research focused on several species of fish.” が正しいです。”species” は単数形も複数形も同じ形である点に注意が必要です。

文法・語彙の誤りを防ぐための対策

文法・語彙の誤りを防ぐための対策

文法チェッカーの活用

論文執筆において、文法チェッカーは非常に有用なツールです。スペルミスや基本的な文法ミスを自動的に検出してくれるため、最終的なクオリティを高める上で役立ちます。

市販の英文校正ソフトやオンラインの文法チェックツールを活用することで、自分では気づきにくいミスを発見できる可能性があります。例えば、あるオンライン文法チェッカーで “The result were significant.” という文をチェックしたところ、主語である “result” が単数であるため、動詞を “was” に修正する提案がされました。

文法チェッカーを活用する際の注意点としては、以下の点が挙げられます。

  • 結果を鵜呑みにせず、提案された修正が正しいか自分で判断する。
  • 複数のツールを試してみることで、より多くのミスを発見できる可能性がある。
  • 基本的なミス検出が主な機能であり、論理構成や表現の適切性までは判断できないことを理解しておく。

ネイティブスピーカーによる校正

より質の高い論文を作成するためには、ネイティブスピーカーによる校正を依頼することが非常に有効です。文法や語彙の誤りだけでなく、自然で適切な英語表現を学ぶ絶好の機会となります。特に学術論文の場合、専門分野の知識を持つ校正者に依頼することで、内容の正確性に対する信頼性も高まります。

校正を依頼する手段としては、以下のようなものが考えられます。

  • 大学や研究機関が提供している校正サービスの利用
  • 専門の英文校正会社への依頼(費用はかかるが、質の高い校正が期待できる)
  • 同じ研究分野のネイティブスピーカーの同僚や友人への依頼

校正を依頼する際には、論文の目的やターゲット読者層を明確に伝えることが重要です。校正結果を受け取った際は、なぜ修正されたのかをしっかりと理解するように努めましょう。指摘された点を学ぶことで、自身の英語力向上にも繋がります。

例えば、ある日本人研究者が自身の論文原稿を英文校正サービスに依頼したところ、文法ミスだけでなく、不自然な単語の選択や回りくどい表現が多数指摘され、より簡潔で専門的な語彙を用いた代替案が提案されたことで、論文全体の明瞭性が大幅に向上した例が報告されています。

類似論文を参照する

自身の研究分野における質の高い英語論文を精読することは、論文英語の質を高めるための重要なステップです。適切な単語の選択、自然な表現、さらには論文全体の構成まで、多くのことを学べます。

類似論文を読む際には、以下の点に注意しましょう。

  • 自身の研究テーマと近い内容の、信頼できる学術雑誌に掲載された論文を選ぶ。
  • 文法や語彙だけでなく、どのような表現が使われているかに注意しながら読む。
  • 特に、議論の展開や結論のまとめ方など、論文全体の構成を意識する。
  • 自分が書いた文章と類似の表現がないかを探し、参考にできる点を見つける (ただし、完全にコピーするのではなく、あくまで参考として自分の文章に活かす)。

また、ネイティブスピーカーが書いた論文だけでなく、英語を母語としない研究者が書いた論文も参考にすることで、自身と同じような間違いを避けるヒントが得られることもあります。

例えば、自身の研究テーマに関する主要な学術雑誌に掲載されている論文をいくつか選び、そこで頻繁に使われている専門用語や表現をリストアップし、自身の論文執筆時にそれらを積極的に用いるように心がけるといった方法が有効です。

要注意!論文で間違えやすい和製英語

要注意!論文で間違えやすい和製英語

そのまま使えないカタカナ英語の例

普段私たちが日常的に使っているカタカナ語の中には、英語圏では意味が通じない、あるいは全く異なる意味を持つ「和製英語」が数多く存在します。論文という学術的な文脈でこれらの和製英語を安易に使用すると、査読者や読者に誤解を与え、研究内容の正確な伝達を妨げる可能性があります。

以下に、論文や会話でそのまま使うべきではない和製英語の例とその英語での一般的な表現を示します。

和製英語英語での一般的な表現
パソコンPC, personal computer, laptop (ノートパソコンの場合)
コンセントoutlet (アメリカ英語), socket (イギリス英語)
ガソリンスタンドgas station (アメリカ英語), petrol station (イギリス英語)
モーニングサービスbreakfast special
サラリーマンoffice worker, businessperson
ナイーブnaive (英語にもありますが、ネガティブな意味合いが強い)
ドクターストップdoctor’s orders

例えば、データを分析するために「パソコン」を使ったと記述したい場合、“We used a PC to analyze the data.” と書くのが適切です。

「デバイスをコンセントに繋いでください」と言いたい場合は、“Please plug the device into the outlet.” となります。

ある日本の研究チームが海外の研究者と共同で研究を行っていた際、報告書の中で参加者の育児状況について言及する際に「ベビーカー(baby car)」という言葉を使用しました。英語を母語とする研究者は「baby car」という言葉から、乳幼児用の自動車のようなものを想像してしまい、実際の意味である「stroller」や「pram」をすぐに理解することができませんでした。この和製英語の使用が原因で、一時的にコミュニケーションに齟齬が生じ、内容の確認に時間を要する事態となりました。。

意味が異なる和製英語の例

和製英語の中には、英語にも存在するものの、日本語で使われている意味合いと英語本来の意味が大きく異なる単語も少なくありません。これらの単語を論文や会話で誤って使用すると、意図しない意味が伝わってしまう危険性があります。以下に、意味が異なる和製英語の例をまとめました。

和製英語日本語での意味英語本来の意味
バイキング食べ放題Viking (ノルマン人のこと)
リサイクル再利用recycle (資源を再資源化すること。日本語の「リサイクルショップ」は “second-hand shop” や “thrift store”)
イメージ印象、雰囲気image (画像、映像、比喩)
クレーム苦情、異議申し立てclaim (主張、要求)
オーダー注文order (命令、順序)
ストップ中止、停止stop (止まる)
エネルギー活力、元気 (英語の “energy” もありますが…)energy (エネルギー、活力。ただし、物理的なエネルギーや活動力を指すことが多い)

例えば、「食べ放題」という意味で「バイキング」を使いたい場合は、英語では “buffet” と表現します。

研究発表のスライドで、「この研究のイメージ」を伝えたいと考え、「The image of this research is…」と記述したところ、英語を母語とする参加者には具体的な画像や比喩の話だと誤解されてしまいました。ここでは、「The main finding of this research is…」のように、研究の主要な発見や意義を伝えるべきでした。

論文に適した英語表現への言い換え

論文では、口語的あるいは曖昧な和製英語を避け、よりフォーマルで正確な英語表現を用いることが求められます。

以下に、論文で推奨される英語表現への言い換え例を示します。

和製英語論文での推奨される英語表現
〜について、〜に関してregarding, concerning, with respect to, in relation to
〜という風にin this way, thus, hence, consequently
〜だと思いますWe believe that …, We consider that …, It is suggested that …
要するにIn summary, In conclusion, To summarize
〜してみてくださいPlease refer to …, It is recommended to …, We suggest that …
結構ですsufficient, adequate, satisfactory
頑張りますWe will endeavor to …, We will strive to …, We will attempt to …

例えば、論文の考察部分で、「この結果について、私は重要だと思います」と書きたい場合に、「About this result, I think it is important.」と直訳してしまうのは不自然です。より適切な表現としては、「Regarding this result, we consider it significant due to…」のように、客観的な根拠と共に述べるべきです。

論文の質を高めるための推敲ポイント

論文の質を高めるための推敲ポイント

論理的な文章構成を意識する

論文は、読者がその内容をスムーズに理解できるよう、論理的で一貫した構成で記述することが不可欠です。各段落が明確な主張を持ち、それらの主張が自然な流れで繋がっていることが重要となります。

一般的な論文の構成要素は以下の通りです。

  • 序論(Introduction)
  • 方法(Methods)
  • 結果(Results)
  • 考察(Discussion)
  • 結論(Conclusion)

各セクションの目的を明確にし、必要な情報を過不足なく記述する必要があります。段落間は適切な接続詞や指示語を用いて繋ぎ、図や表を効果的に活用しましょう。

客観的な事実と研究者の解釈を明確に区別することも重要です。例えば、ある研究論文では、結果のセクションで客観的なデータを詳細に示し、続く考察のセクションでそのデータが意味することや、既存の研究とどのように関連するのかを深く議論することで、読者の理解を深めています。

冗長な表現を避ける

論文は、情報を簡潔かつ明確に伝えることを目的としています。そのため、以下のような冗長な表現は避けましょう。

  • 同じ意味の言葉の繰り返し:「〜について」と「〜に関して」を同じ文中で使うなど。
  • 不要な修飾語や副詞:意味を強調しない副詞や、すでに意味に含まれている形容詞など。「非常に重要な役割」「完全に一致する」など、具体性を欠く表現は避けましょう。
  • 回りくどい言い方:「〜ということが言えるであろう」「〜と考えられる」といった曖昧な表現は避け、「〜である」「〜を示す」のように断定的な表現を心がけましょう。
  • 多用される受動態:能動態で表現できる場合は、積極的に能動態を使用することで、文章がより直接的で力強くなります。
  • 句読点の誤用:不必要な句読点は文章を読みにくくします。文の構造を明確にするために適切に句読点を使用しましょう。

可能な限り能動態を用い、句読点を適切に用いて文の構造を明確にすることも重要です。

抽象的な表現は避け、具体的な数値やデータを用いることで、説得力のある記述を心がけましょう。例えば、「〜というような状況が見られた」は「〜という状況が見られた」に、「非常に重要な役割を果たしていると考えられる」は「重要な役割を果たしている」とそれぞれ簡潔にできます。

客観的な視点で読み返す

論文を書き終えたら、必ず客観的な視点で読み返すことが重要です。時間を置いてから読み返したり、声に出して読んでみたり、他人に読んでもらったりすることで、自分では気づかなかったミスや改善点を発見できることがあります。

推敲の際には、以下のような点に注意してチェックリストを作成し、確認していくと効果的です。

  • 文法、スペルミス:基本的なミスがないか丁寧に確認しましょう。
  • 文章構成の論理性:各セクションが明確な目的を持ち、論理的な流れになっているか確認しましょう。
  • 用語の正確性:専門用語のスペルや使い方が正しいか確認しましょう。
  • 参考文献の記載漏れや形式の不統一:引用文献が適切に記載されているか、形式が統一されているか確認しましょう。
  • 客観性の欠如:感情的な表現や主観的な意見が含まれていないか確認しましょう。データに基づいた客観的な記述を心がけましょう。

また、印刷して読むことで、画面上では見過ごしがちなミスを発見できることがあります。例えば、自分が書いた論文を数日後に読み返したところ、同じ単語が近い距離で何度も使われていることに気づき、類義語辞典を活用して表現を多様化することで、文章がより洗練されました。

最後に

本記事では、日本人研究者が論文英語で陥りやすい頻出ミス、その克服方法、そして特に注意すべき和製英語について詳しく解説しました。論文執筆は決して容易ではありませんが、今回ご紹介したポイントを常に意識し、日々の研究活動の中で英語に触れる機会を増やしていくことで、必ず質の高い論文を作成できるようになります。

自身の研究成果を世界に発信するためには、論文の質を高めることが不可欠です。正確な文法や語彙の知識はもちろんのこと、和製英語の誤用を避け、論理的で分かりやすい文章を心がけることが、査読者や読者からの信頼を得るための重要な一歩となります。

困難に感じることもあるかもしれませんが、諦めずに一つ一つの課題と向き合い、自信を持って論文作成に取り組んでください。

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