最近、論文、特に研究論文に関する話題がちまたでも取り上げられることが多くなっています。
たとえば、特化型生成AIに関する最新論文が発表されたり、医療分野で創薬関連の最新情報も論文に掲載されたりしています。また医薬関連では、論文に掲載される研究結果自体が、大学でのプレスリリースの対象となることもたびたびです。
本記事では、論文の本質から始め、論文の積極的な活用方法まで網羅的に説明します。
是非、読み方のコツをつかんで、自身の研究にも積極的に利用してください。
また研究にはなじみの少ない方でも、論文の本質を把握できるように解説しております。
目次
まず読もうとしている論文とは何か、をあらかじめ知る必要があります。
論文の種類には、人文科学の分野や、科学技術の領域などに関する論文があります。ここでは主に、科学技術に関する論文、特に研究論文を中心にして、人文科学分野の論文でも、役に立つように記載しております。
論文とは、研究対象に関して、これまでの研究や事象をまず明らかにして、これに対して、自身の考え方や見解を示すと共に、それに基づいた研究結果をもとに、その考え方の内容の妥当性を、論文として表現するものです。
人文科学分野では、テーマとして、論文執筆前の「問い」に対して、著者の見解としての「答え」が記載されていればよい、とする考えもありますが、通常の研究論文では、「問い」と「答え」の間の「実験計画」や「実験結果」も重要な要素となります。
もちろん「問い」と「答え」が直線的につながっている場合もありますが、研究論文では、何かしらの研究テーマとは直線的には関連しないデータもありえます。
これらの直接的には関連しない(ように思われる)データも科学分野では、非常に重要で、「問い」と「答え」の間にある論理自体が違う場合も多くなっています。
ノーベル賞級の研究でも、発端はそのような(現時点では関連しないようにみえる)データが、その後の科学技術の発展に、非常に役に立った場合があります。
人文科学や科学技術の発展に寄与してきた、多くの研究論文ですが、どのような読み方をすれば、よいのでしょうか。ここでは、読み方を学ぶメリットについて解説します。
日夜、多くの論文がいろいろな学術雑誌に投稿され掲載されていますが、その内容はさまざまです。
科学技術関係でいえば、NatureやScienceなど、厳密な査読が付く学術雑誌の場合は、99%以上はその論文は妥当性が証明されているといえます(なお両紙でも、かなりまれではりありますが、実験結果や論旨に間違いが後で判明する場合もあり、絶対正しいということはありません)。
ましてこれ以外の学術雑誌の場合、その内容の真偽や根拠が正確かどうか、読者の立場でも、毎回疑問を持ちながら読むことも重要な視点です。
論文の読み方を学び、読者自身で判断できるようになることが大切です。
また論文の読み方をマスターしておくと、多数の論文を効率的に検討することができます。
最近は、AIに論文を読ませて、その結論だけを理解すればよいという考え方もあるようですが、深層学習法とは既存のデータを数多く取り込んでから、論理を導く手法です。
従って、もし効率的な読み方をAI頼りとしていると、いつまで立ってもAIからは独立できず、いわばその下働きといったことも考えられなくはありません。効率的な読み方を身に着けておくことは、科学者や技術系の業務をこなす人にとっては必須ともいえる技術です。
科学研究論文のみならず、人文科学分野の論文でも、論文の構成を知り、それに沿って読み方をアレンジしたり、自身の研究に役立てる必要があります。
論文の構成には、要旨、序章、本論、終章、参考文献といった区分がありますので、これを解説します。
要旨とは、論文全体の概要を示す部分でもあり、研究論文でも一番重要なポイントが記載されています。各種論文の「要旨」ばかりを集めて、再編集される文献も多数あり、いわゆる論文のキーワードを含め、自身の研究により、得られた成果を過不足なく網羅していることが大切です。日本語の論文では、400文字程度以内が一般的です。
逆にいえば、読者は要旨をまず読んで、それ以外の部分を読む必要があるか判断するための、重要箇所となります。
本論の前の部分ですが、当該論文の背景を関連論文から示す部分です。またさらに重要なポイントとしては、当該研究に関する「問い」と「答え」に関連する研究テーマについても、記載されていることが必要です。
読者にとっては、論文の著者がどのようなテーマでこの論文を作成したのか、が理解できます。
本論は、研究論文の中核をなす部分です。研究論文でいえば、「実験方法」「実験結果」「考察」を含めた箇所でもあり、論文の大半を占める部分です。
実験方法は、脇役の感じもある個所かと思いますが、実際はかなり重要な箇所で、これをおろそかにした論文は、特に研究論文では成り立ちません。
場合によって、実験方法が異なると、別の結果がでてしまう可能性もかなりあります。特にバイオや医療系などの論文では、実験方法の開発自体が問題となっている分野も数多くあります。また宇宙物理などの分野では、実験方法である観測系の設定・確立自体が、一番の課題です。
たとえばスーパーカミオカンデなどの観測機器設置自体が、ノーベル賞の対象となっています。
なお考察は、論文に掲載される「参考文献」も十分考慮して、自身の論文テーマと今回の実験結果をあらためて検証する部分であり、こちらも重要なポイントとなります。
要旨とも関連する部分がありますが、最後に自身の論文テーマとの関連から考察し、文章にまとめることが必要です。特に、総説論文ともいわれる、自身の論文や、関連研究者の論文を総合的にまとめる場合は、重要な部分となります。
参考文献は、実験方法や考察に関連する研究論文を、自身及び他の研究者を含めて、網羅的に検索して明記します。従って、いわゆる論文検索の手法で、関連の参考文献を適切に過不足なく、全て記載する必要があります。
科学研究論文のみならず、人文科学分野でも日進月歩で、自身の専門分野の論文が刊行されていきます。
このような状況で、当該分野に新たに参入したい研究者などは、最新の論文を読む必要が常にあります。
医療分野でも、たとえばPubMedなどの最新情報誌を常に参照していないと、あっという間に最先端研究の趨勢から取り残されてしまいます。また大学や大学院などで新たな研究に参加する場合でも、効率的な読み方やコツをあらかじめ理解しておく必要があります。
論文を読む前に、読む目的について明確にしておく必要があります。
大学などの授業の一貫として、当該分野の論文を読む場合は、その授業科目の技術背景や最近の進展を「理解」するといった目的かと思います。このような場合は、AI学習法などを使用するのもひとつの方法かもしれませんが、自分が研究者となった場合には困ることになります。
さらに大学院になって、自身の「研究テーマ」を持ち、主体的に研究を実施していく場合はどうでしょうか。当然、当該テーマに関連する他の研究論文を読んでおく必要があります。
既に実験済みの研究をいくら実施しても、追試しているだけの研究結果であり、新規性がないので、研究論文としては投稿できません(また受理されません)。なお、総説論文などでも一部みられるように、追実験自体が意味を持つ場合もありますが、新規論文としては意味がありません。
先ほどの研究テーマとも関連しますが、他の研究論文、特に関連した論文を抽出し、実際に読んでおく必要があります。
このため、自身の研究分野の関連論文を効率的に探すことが大切です。当該研究に関する「キーワード」をインターネットで検索することはもちろんですが、グーグル スカラーなどの論文専用の検索サイトを用いることも重要です。
なおヒットする論文が多い場合は、引用数が多い文献をまず読むことが推奨されています。もちろんこれらをまず読むことが効率的ではありますが、これだけでは不十分です。
たとえば、自身の研究テーマに関して、実験方法をあらたに開発したというような場合があります。このような場合は、本論のなかの「実験方法」についても、注意を払う必要があります。
実験方法での手法自体を、キーワードのひとつとして取り込むことも有効ではありますが、それ以外に実際に実験方法の部分の記載も、論文で確認しながら読むことが大切です。
バイオ分野でもたまにありますが、当該実験の確認実験をしても、同じ研究結果にならないこともあります。
学術研究では最近、実験ノートを記載しておくことが、当該研究分野の知財管理からも推奨されています。
各種論文を読んだ場合も、自身の言葉(あるいは文章)で論文の要点をまとめて記載しておくことをおすすめします。
また、当該リンク先も記載します。もちろんノートではなく、自分のPC上のファイルでも結構です。
これらを書き溜め、蓄積することにより、論文の読み方だけに役立つのではなく、自身の研究自体に将来にわたって役立つ財産となります。
一度、当該論文を読んでおくと、後になってその実験方法などが非常に役立つこともあります。
特に、バイオや医療分野では、いろいろな素材や実験器具・設備が使用されるので、少し違う研究テーマをあらたに開始するなどの場合、有効です。
本記事では、論文の読み方を学ぶメリットから始め、論文の構成や、読み方のポイントなどを網羅的に解説しました。
読者のみなさまのいろいろな立場によって、論文を読む方法やそれに伴う活用策も異なってくるかと思います。また一見、遠回りとみえるような参考文献の活用などは、今後の研究生活にも、場合によって非常に有効となります。
論文自体に読まれてしまうのではなく、是非自身の目的にそった積極的な利用を心がけてください。
本記事が、研究生活を開始して間もない方々などを含む、多くのみなさまのお役に立てれば幸いです。
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東大応用物理学科卒業後、ソニー情報処理研究所にて、CD、AI、スペクトラム拡散などの研究開発に従事。
MIT電子工学・コンピュータサイエンスPh.D取得。光通信分野。
ノーテルネットワークス VP、VLSI Technology 日本法人社長、シーメンスKK VPなどを歴任。最近はハイテク・スタートアップの経営支援のかたわら、web3xAI分野を自ら研究。
元金沢大学客員教授。著書2冊。