h-indexとは、個々の研究者における研究成果を定量化する指標のことです。
h-indexは、たとえば研究者が関与している研究プロジェクトの成果を測るためにも利用されています。個々の研究者の研究成果に対する評価は、その内容や社会的な重要性、所属する分野など、いろいろな要素が関係するため客観的に示すことはなかなか難しいものです。
本記事ではh-indexについて、その算出方法や目安から利用時の注意点まで詳しく解説します。
目次

h-indexは、個々の研究者における研究成果を定量化する指標のひとつです。
研究者が公開している論文の「質」と「量」の両方を評価する指標で、「h回以上引用された論文が、h本以上ある」という条件を満たす「数値h」のことを指しています。
h-indexでは、高いほど研究の影響力や貢献度が高いとされますが、分野や研究歴による違いがあるため、その特性を理解して利用することが重要です。
よく使用されている、引用数や総被引用数では、その当該論文の研究へのインパクトを測定する指標となっています。これに対して、h-indexでは、研究者が発表している複数の学術論文を、なるべく網羅的に評価することを目指しているともいえます。
このためh-indexは、研究者のいわば当該研究における生産性と影響力を評価するため、学術界でも比較的よく利用されています。とくに、大学やいろいろな研究所において、研究者の新規採用や昇進の際に業績を評価するため、使用されることがあります。
研究成果を評価する際、単に論文数だけに頼るとその内容や論文の質の高さなどは明確には分かりません。また公開された論文の引用数や総被引用数だけに頼ってしまうと、数本の論文で得られたものなのか、多数の論文による成果なのかが分かりません。
あらたな研究プロジェクトを開始する場合や、実行中の当該プロジェクトにおける研究評価を行うとき、何らかの数値化判定が必要な場合があります。しかしh-indexを利用すれば、比較的バランスよく、研究者の公開論文の質と量を評価することができます。

h-indexは、いわば研究者が公開している論文の質と量の両方を定量化した数値になります。ここでは具体的なh-indexの算出方法やその目安について紹介します。
h-indexは、2005年に物理学者のJorge E. Hirsch氏が公表した指標です。その定義では、「被引用数がh回以上ある論文が、h本以上ある」とき、「その数値h」のことを示しています。
具体的な算出方法は、まず研究者が公開している論文を、被引用数が多い順に並べかえて、その後、この定義を満たすhの最大値を求めることになります。
たとえば、ある研究者の論文を被引用数の順に並べたとき、それぞれの被引用数が
30、20、15、10、8、7、3、2、1、1
と仮定します。このとき、h=6では条件を満たしますが、h=7では上から7番目の「3回」が本条件を満たさないため、h-indexの数値は6となります。この場合では、「被引用数が6回以上ある論文が、6本以上ある」ので、「h-indexは6」と算出されます。
さらには、h-index自体 を理論的に考察するという研究もかなり進展しています(下記括弧内参照)。
引用文献:https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/18554/1/kouen37_49.pdf
「h-index は引用回数の分布関数に基づく不動点となっており、この発想は h-index の確率論的性質の把握を容易にするとともに、これに基づいて線形時間で指標を算出するアルゴリズムが構築可能である。
研究者個人も研究機関の場合もともに、時間とともに学術論文はほぼ単調増加するので、引用構造もそれとともに規模と複雑さが増大してゆく。h-index が分布関数の不動点であることから、分布に大きな変化が無いと仮定すると、データ規模との正の相関が直ちに帰結する。」
なお確率論的思考により、h-index以外の関連指標をあらたなアルゴリズムを用いて開発することも可能なようです。
それではh-indexの目安としては、どの程度なのでしょうか。
たとえば10回以上引用されている論文が10本以上ある場合、h-index数値は10となります。この数値が高くなるほど、当該研究分野への貢献度が高いと評価されます。
h-indexの基準は、学問領域によってはかなり異なります。自然科学分野では引用数が多く、h-indexの平均値も高くなる傾向がありますが、人文社会科学分野では比較的引用数が少ないため平均値も低くなることがあります。
自然科学分野でも、たとえば生命科学領域においては30程度が優れた研究者の業績目安とされることがあります。研究機構や大学によっても、まだ統一的な基準はほとんど設定されていません。
なおh-indexを教授、准教授など、教員の能力判定の指標のひとつとする大学もあるようです。また数値はあくまでも目安であり、同じ分野で活躍している研究者や同じ研究機関の他の人の数値を参考にする程度に考えるべきです。
ただ一般的にいえるのは、h-indexは研究キャリアの進展に伴って増加する傾向があります。当該専門分野における自身の研究が進行すれば、それに伴いいろいろな論文の引用数は、低くなることはなく増加するからです。
このため当該分野の新人研究者より、経験ある研究者の方がh-indexは高くなります。分野や研究の性質に応じて異なるため、個々の研究者が自身で目標設定する方がよいでしょう。
ノーベル賞級の研究者では、当然h-indexはかなり高くなっており100以上であると推定されます。ただ本年度ノーベル賞の先生でも、たとえば10年前はそれほど高くはなく、その後、急に増加するというパターンを取ることが多いようです。
これは、当初あまり研究されていなかった課題について、先生の粘り強い研究活動によって、世界中の研究者から注目を浴びて、いわば後追い研究が実施されたからともいえます。このような後追い型の研究がなかにはあることも確かで、実用化段階などの応用研究においては、多くなっています。
なおh-indexがたとえ同じだったとしても、それぞれの研究テーマの内容によっても、かなりその研究内容は違う可能性があります。基礎研究分野では、当初はh-indexが低くても粘り強く研究実施することも必要です。
本年度ノーベル賞を受賞されたふたりの先生も、自身の研究テーマが注目されていなかった時代からその後は着実に成果をあげられ、その結果、引用数やh-indexが増加したともいえます。
h-indexを算出するためには、被引用数を把握しなければなりません。
ここでは他の研究者のh-index算出は想定していませんが、自身の学術論文を検索する場合には、Google Scholarを用いるのが比較的便利です。
Google Scholarでは各論文毎に、たとえば「被引用数10」などと記載されているので、それを用いてh-index算出方法にあてはめて、自分で算出することができます。また自身の名前で検索すれば、当該論文リストが出てくるので、各論文を参照して引用数をみることもできます。
Google Scholar以外にも、ScopusやWeb of Scienceなどを利用することもできるようですが、当該データベースのアクセス権限が必要です。ただしこの場合でも、データベースに登録されているジャーナルが一部異なっているため、数値に若干の差異が生じるときがあります。
またこのような場合、所属している大学や研究機関のPCを使ったり、許可されたアカウントのIDやパスワードを使用したりしなければ、サイトにはアクセスすることは出来ません。アクセスができれば、著者名検索で自分の論文を検出し、条件を設定して必要な論文だけに絞っていくことができます。
h-indexと他の評価指標との関係についても解説します。
以上のように活用されているh-indexですが、研究者や研究内容を評価するときには、他の評価指標との関係も把握しておくことが大切です。他の指標でもそれぞれのメリットや注意点があるので、それらを踏まえた上で総合的に用いるようにします。
「被引用数」は、学術界といういわばブロック内で、従来からよく使用されてきた指標です。他の論文への引用総数として明確に記載することができるので、かなり客観的な数値となります。
とくに引用されている「Highly Cited Researchers(高被引用論文著者)」という関連の指標もあります。ノーベル賞を受賞された北川先生は、12年連続(2025年時点)で高被引用論文著者に選出されており、当然ですが世界トップクラスの影響力を持っています。
ただ被引用数だけでは、先ほども記載しましたように、論文の量と質の両方の側面からの評価ができないという欠点があります。たとえば、被引用数1の論文が10本ある研究者と、被引用数10の論文が1本の研究者の評価では、h-indexは同じでもその内容は同等なのかという課題などです。
また研究分野によっては、研究者数が圧倒的に多い領域と、逆にかなり少ない領域があります。前者では、引用数は研究者数に比例して多くなる可能性が高くなります。
このため、被引用数と論文数のバランスを意識した数値であるh-indexが用いられる場合が多くなっているといえます。
被引用数は、研究期間が長いほど増えるため、長く研究をしている人のほうが、当然数値は高くなります。この問題を解消するため、対象論文を直近5年間のみに限定する「h5-index」という指標も使われることがあります。
インパクトファクターとは、ある特定の学術雑誌が、当該の研究分野でどれだけ引用されているかを示す指標です。
h-indexでは研究者個人の業績を評価するのに対し、インパクトファクターはジャーナル全体での影響力を評価します。自然科学系などの学術雑誌が、各研究分野での相対的な影響力の大きさを計測するための指標のひとつです。
インパクトファクターは、米国の科学情報研究所(ISI)創設者であるユージン・ガーフィールド氏によって1970年代に考案されました。過去2年間のデータを使用して「その学術雑誌に掲載された、すべての学術論文の引用数をその学術雑誌の掲載数で割る」ことによって、計算することができます。
なおh-indexの考え方は、研究者個人の評価だけでなく、学術誌を評価するためにも利用が可能です。この場合、学術誌としてのh-index類似の指標を調べる方法は次の通りです。
1. 学術誌に掲載されている全論文の被引用数を調査する。
2. 被引用数の多い順に論文を並べ替える。
3. ランキングの数値と被引用数を比較し、ランキングの数値が被引用数より大きくなった時の順位を学術誌のh-indexとする。
たとえば、ある学術誌のh-indexが10であれば、その学術誌は他の学術誌から10回以上引用されている論文が10本以上掲載されていることを意味します。

h-indexのメリットとしては、かなりの程度計算がしやすいことがあげられます。
研究者個人の論文数が非常に多い場合は、すべての論文を調査するのは大変です。この場合、すべての論文の被引用数を把握しなくても、被引用数の多い上位の論文とその被引用数を把握できれば、簡単に計算できます。
インパクトファクターの項目でも記載しましたが、同様な計算方法で学術誌やさらには研究機関自体の評価も可能です。このためh-indexは、大学や大学院、さらには研究機関において、研究者の新規採用や昇進のときの業績評価にも一部利用されています。
またh-indexは、被引用数といういわばブロック内の公的な指標なので、仮想通貨ブロックチェーンのように改ざんが極めて困難なのは大きなメリットで、以前本欄コラムでも紹介したTOEIC不正受験などはそもそもありえません(仮想通貨自体で問題なのは、仲介業者の方です)。外国人によるTOEIC評価値を用いた大学院への不正入学などが、極めて起きにくいというメリットもあります。
最近、早稲田大学や筑波大学などで相次いで、一時期の外国人によるTOEIC不正得点を用いた大学院入学の取り消しが実施されているようです。他の国立大学でも大学院教育には、文科省から多額の運営費交付金など(すなわち税金)が投入されているので、同様な処置も場合によっては必要です。
さらにh-indexは、当該研究分野における研究プロジェクトの成果を評価するためにも用いられ、プロジェクト自体の業績を測る指標としても活用されています。たとえば内閣府では、研究機関の機関評価指標としてh-indexを利用することも検討されているようです(下記、括弧内を参照)。
引用文献:https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/18554/1/kouen37_49.pdf
「h-index(Hirsch2005)はもっとも広く用いられている書誌データに基づく学術評価指標の一つである。・・・
既存の h-index および派生指標にはいずれも、指標がデータセットのサイズと強い相関を持つという性質があり、機関評価指標として用いるには困難がある。提案指標はこの問題を引用構造の自己相似性に着目することで解決するものである。
本研究は著者らが内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(以下 CSTI)に所属し、科学技術政策に係る分析機能・データを共有するプラットフォームである e-CSTI の研究と構築に携わっていた折に、業務の一環として行われたものである。」
としており、h-index関連の別の新規評価指標への応用面が、研究されています。
「本研究ではスケール不変かつ分野の相違にほぼ影響されない h-index のフラクタル次元として定義される機関評価指標 h-dimension を開発、提案した。研究活動の多面性や人類の適応力を考えると、単一の数値によって研究活動評価の全てが可能になることはなく、また、この指標の前提とする評価基準を迂回する戦略が考案されると思われる。」
以上のように、h-indexではないものの、関係する指標があらたに開発されているようです。
なお企業においても、研究開発部門の評価基準としてh-indexが使用されることがあります。とくに技術開発に関する研究の評価において、h-indexを参考にすることで、当該研究者やプロジェクトの影響力も測定することができます。
このようにh-indexは、研究者の昇格や採用において重要な役割を果たすことがあります。とくに研究機関や大学では客観的な評価をおこなうため、業績評価の一部としてh-indexを用いることがあるようです。
h-indexが高いことは研究者の実績の証明ともなり、キャリア形成において有利に働くことがあります。しかし過度にh-indexを重視することは、基礎研究などの分野での可能性を狭める可能性もあるため、バランスの取れた評価が求められます。
h-indexは、他の指標と組み合わせて利用することで、より包括的な評価が可能になります。たとえば、インパクトファクターや論文数と組み合わせることで、研究者の影響力をより詳しく評価できます。

ここでは、h-indexの利用時の注意点についても紹介します。
先ほどのメリットの項目でも一部触れましたが、h-indexは万能とはいえません。h-indexにはいくつかの限界があり、批判の対象となることがあります。
またh-indexでは過去の実績にかなり依存するため、新しく研究をおこなう若手研究者の評価に対して、不利になる可能性があることです。また、分野によっては引用数が異なるため、異なる分野の研究者を公平に比較することが難しくなります。
とくに被引用数は、研究期間が長いほど増えるため、長く研究をしている人のほうが当然数値は高くなります。そのため、優秀であっても論文数が少ない若手研究者の貢献度の数値が低く、評価されにくいという課題があります。
このような問題を解消するため、評価の対象論文を直近5年間に限定する「h5-index」という指標が使われることもあります。
また同じ化学領域や医学領域で区分したとしても、その中の細分化された分野では、引用数が異なることはたびたびあります。昨年のノーベル賞受賞のふたりの先生の研究分野においても、研究開始当初では、その引用数は低かったと言われています。
坂口先生の研究でも、2016年の時点ではh-indexは100以下であったようですが、それ以後急激に増加して、現在では100を大幅に超えていると推定されます。制御性T細胞の研究自体が、当初は細胞免疫研究の主流ではありませんでしたが、現在はまったくその状況が変化しています。
このように、研究分野の特殊性や研究者自身の状況にも大きく影響されるといえます。
h-indexは、研究者の業績を評価するための指標とされていますが、そのメリットと限界を理解して使用することが大切です。今後の研究の発展に期待しつつ、研究の質を高めるための手段として、一時期のTOEICのような不正行為は極めて起こりにくい指標として、h-indexを有効に活用していくことが求められます。
ただ業績評価とは、いろいろな場面で利用され、その一部は研究機関や団体などの経営層にはいわば都合のよい制度となることがあります。企業においても、たとえば、MBO評価などがひところ実施されて、直近3年や5年程度の評価がボーナスのみならず、個人の昇進などにも影響していました。
企業は社会において基本的には自由競争ですから、仕方がない側面がありますが、従業員の評価は熱心でも経営層の評価は正確ではなく、今でも不正会計などが一部の大手企業で発生しています。ベンチャー企業でも問題が生じる可能性は、昨年発覚した例など、かなりの程度は経営層からの指示や黙認などによるものが多くなっています。
まして科学研究分野という、極めて属人的な業務を評価すること自体が、かなり難しいともいえます。むしろ研究者より、最近いろいろ問題がある政治家、とくに自治体の首長や議員、さらには国会議員などの方が、公人でもあり適正な業績評価を実施すべきではないでしょうか。
現在本稿を記載完了するところですが、昨日からまた国民の税金を使用した国政選挙をするとかいう話が持ち上がっています。ときに政党などの公約評価などはよく聞きますが、議員自体の業績評価はあまり聞きません。
いろいろな項目が影響するので難しいようですが、今後も研究者の評価を実施するぐらいなら、公人であり且つ、当選後は公的な業務を実施すべき、首長や議員などの業績評価指標があってしかるべきではないでしょうか。
もし長期の古参議員が有利になるなら、直近の評価をおこなうh5-indexのように数年間程度に限定することも考えられます。本欄でも紹介しました「ギフトオーサーシップ記事」での記述のように、利益誘導があるときは、場合によってはマイナス部分を加味するなどもありうるかもしれません。
このように評価は難しい場合もありますが、個人の研究者と違って議員は公人でもあり、ある種適正な業績評価があってもよいのではないでしょうか。

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都内国立大学にて、研究・産学連携コーディネーターを9年間にわたり担当。
大学の知財関連の研究支援を担当し、特にバイオ関連技術(有機化学から微生物、植物、バイオ医薬品など広範囲に担当)について、国内外多数の特許出願を支援した。大学の先生や関連企業によりそった研究評価をモットーとして、研究計画の構成から始まり、研究論文や公募研究への展開などを担当した。また日本医療研究開発機構AMEDや科学技術振興機構JSTやNEDOなどの各種大型公募研究を獲得している。
名古屋大学大学院(食品工業化学専攻)終了後、大手食品メーカーにて31年間勤務した経験もあり、自身の専門範囲である発酵・培養技術において、国家資格の技術士(生物工学)資格を取得している。国産初の大規模バイオエタノール工場の基本設計などの経験もあり、バイオ分野の研究・技術開発を得意としている。
学位・資格
博士(生物科学):筑波大学にて1994年取得
技術士(生物工学部門);1996年取得