謝辞とは、卒業論文や学位論文、さらには発行書籍などの最後に必ず記載されるものです。
卒論や修論、博士論文などの学位論文では、最後に謝辞を入れて、指導教官などお世話になった人たちへの感謝を記載するのが通例です。このように必ず記載される「謝辞」ですが、ふつう卒論・修論などははじめて書くわけですから、どのように書いたらよいか、実際の場面では迷うことも多いかと思います。
本記事では、謝辞の書き方について、卒論や学位論文などに記載する内容から注意点まで解説します。
目次
卒業論文や学位論文においては、自身の努力がまず必要ですが、必ずといっていいほど、指導教官や先生方のアドバイスや経験が、当該論文の作成や修正作業にも反映されています。
初めて卒論や学位論文を作成するわけですから、論文作成方法について本コラムでも紹介していますが、実際に執筆してみないとわからないことがたくさんあります。はじめて論文作成にたずさわる人にとっても、謝辞をどのように書いたらよいかは重要な問題ともなります。完成度の高い謝辞になっているかは別として、最低限、自身の先生方への感謝のことばを記載するのが、謝辞ともいえます。
本コラムの中では、すでに「卒論の書き方とは?卒論作成について事前準備からポイント・注意点まで紹介」、「英語レポートとは?実際の書き方について事前準備からポイント・注意点まで紹介」やさらには「原著論文とは?その定義から書き方や作成ポイントまで紹介」といったように、多くの論文作成法を掲載しています。このような論文作成において、通常は文献紹介などの直前に「謝辞」の記載をすることとなります。
謝辞は、こうした人へ改めて感謝を伝える機会となります。さらに文字に残すことで、論文を読む人にも、論文執筆に協力してくれた人たちが誰かを伝える機会でもあります。また博士論文などの場合、研究費、資料の提供などで企業や組織などのお世話になった場合、謝辞がその貢献を明示するという、実務的な側面もあります。
謝辞の書き方ですが、論文執筆にあたって協力してくれた人たちへの感謝を簡潔に述べることが主眼となります。
たとえば学位論文を完成させるには、研究計画を一緒に相談した人や研究を進める際にアドバイスをしてくださった方、論文添削してもらった人などの多方面から協力をしてもらっていたことを示すことが必要です。
謝辞の文字数には基本的に決まりはありませんが、分量としては、1ページ程度に収めることがベターです。また謝辞を記載する場所は、卒論や博士論文を含めて、結論より後で、参考文献や付録の前などに載せることとなります。
なお大学によっては、謝辞の場所を含めて、学位論文の記載法があらかじめ決定されています。また決定ではなくても、長年の習慣でおよその位置が設定されていることもあります。
謝辞の構成ですが、まず研究室の教授などの主指導教官へのお礼を記載します。また従来から学際的な研究の場合は、指導してもらう研究室はひとつではなく、はじめからふたつの場合があります。
この場合、副指導教官に類する先生が、他の研究室の教授や准教授ということもあり、それらの方々への感謝の気持ちも大切です。また自身が所属する研究室のメンバーからのアドバイスや、論文執筆以外にも、研究の着想や実験・調査など様々な場面でお世話になったことへの感謝を伝える必要もあります。
原則として地位が上位の人から順にお礼を書くことになりますが、主指導教官が教授ではなく准教授などの方の場合もあり、このような場合は、自身へのメインの指導教官から、はじめて記載します。なお、大学での役職が、教授などの役職ではない場合は、〇〇博士と、博士号で呼称した方がよいでしょう(英語論文の記載でも同様です)。
謝辞は感謝を伝える場であるため、感謝の表現をいくつか持っていた方がよいこともあります。ただ研究論文は文学作品ではないので、過度に表現にこだわる必要はないと思います。
謝辞でよく使われる表現には、感謝と深謝があります。深謝というのは、感謝の気持ちをより深める言葉です。気持ちが入った用語なので、指導教員などに対して用いられることがよくあります。なお「感謝の意を表する」や「深謝の意を表する」などの表現もありますが、卒論や修論などに使用するのは、やや違和感があります。
たとえば謝辞の表現としては、以下のようなものがあります。
・本研究を行うにあたり、有益な御指摘と御指導をいただいた〇〇教授に、深謝いたします。
・△△研究室の皆様には、研究開始から温かいご指導ご鞭撻を賜りました。心より感謝申し上げます。
後者の表現は、たいていの研究論文の場合、当該研究室では研究アドバイス以外にいろいろお世話になっていることが多く、そのような場面では特に大切です。
英語論文の謝辞での表現もあります。従来から、国内大学でも博士論文は、英語で執筆されるのが規則となっている大学も多く、そのような場合に使用します。
・The author would like to express his sincere gratitude to Preofessor 〇〇 for his invaluable advise throughout the study and criticism of the manuscript.
これは英語による博士論文での謝辞の例です(「author(筆者)」として、第3者的な表現をします)。なおこの場合は、その後の感謝の文章では、「I(私)」ではなく「He」として継続して記載していくことになります。
謝辞の具体例について、かなり古くなりますが、当方が執筆した修論、博士論文や刊行書籍の「謝辞」該当項目について、その記載例として紹介させて頂きます。
「本研究を行うにあたり、2年間にわたって御指導いただきました〇〇先生に厚く感謝いたします。
また2年間、反応工学的な立場から種々の御指導を下さった〇〇助教授、さらに有益な御指摘と御指導をいただいた〇〇教授に、深謝いたします。
さらに、◇◇の製造に関して種々のご助言をいただいた◇◇製造学第2研究室の◇◇教授に深謝いたします。
最後に、〇〇先生をはじめとして、いろいろとお世話になりました〇〇工学研究室の皆様に、感謝いたします。」
この例では、〇〇工学研究室と◇◇研究室のふたつから、当該研究の指導を受けていることを示しています。
The author would like to express his sincere gratitude to Preofessor 〇〇,University of Tsukuba, for his invaluable advise throughout the study and criticism of the manuscript.
Also, he wish to thank to Dr.◇◇,Member and late Dr.◇◇,former Director in ◇◇ Center where the author stayed and studied during the year of 〇〇-〇〇,for their invaluable suggestions.
His thanks go to Dr.〇〇, Executive Vice President and late Dr.〇〇,former Executive Vice President of 〇〇Co.,Ltd, for their valuable encouragements of the study on Bitter Taste Sensitivity.
こちらも最初の〇〇教授と◇◇教授は、日米の大学での指導教官となりますが、両方の大学でご指導を頂いたおかげで、博士論文を作成することができたものです。最後に自身が所属していた企業の関係者を記載します。通常はミスターとなりますが、その関係者2名とも博士号をお持ちの方でしたので、ドクターの称号で呼ぶことができました。
「最後になりましたが、本書にもつながる〇〇に関する博士論文の執筆についてご指導いただいた、〇〇大学名誉教授の〇〇先生に心から感謝したいと存じます。先生のもとで研究及び論文を執筆させて頂いたことにより、以後はさらに理論的に〇〇研究をおこなうことができました。
なお本書の執筆にあたり、〇〇出版社の〇〇会長には大変お世話になりました。執筆作業において、右も左もわからない筆者のわがままをお聞きいただき、大変感謝しております。」
この例では、書籍を刊行していただいた、出版社会長への感謝についても記載しています。またいろいろ執筆について教えて頂き、実際にも支援していただきました。
卒業論文、修士論文、博士論文などは単一著者が基本となるので、指導教官を含めて、その他の協力者は、謝辞に記載する形となります。
たとえば動物実験がかなりの部分を占める研究では、動物実験施設を管理したり、実験系の計画にアドバイスしてくれるような実験協力者などにもお礼を述べるとよいでしょう。
また奨学金や研究費など研究の助成金を出してくれた企業や団体や、研究に協力してくれた企業がある場合も、支援への感謝の意を伝えることが大切です。たとえば学術振興会の助成金などでは、謝辞の項目にそれを記載するよう指示がある場合もあります。通常の場合は、記載形式まで明記されているので、それに従って記載するようにします。
研究者を謝辞に記載する場合、事前に本人の承諾を得る必要があります。たとえば、学際的分野などでは、同じ大学の複数の研究室や場合によっては他大学の研究室との共同研究があります。このような場合の研究論文などでは、相手先の教授の承諾をあらかじめ取るようにします。
その方の名前が記載されることで、論文を認めたことになり責任を伴うからです。通常は、研究指導の会などであらかじめ複数回顔を合わせているので、あらためての了解は必要ないかもしれません。当然ですが、承諾をいただいた方の名前は誤りのないように記載しましょう。
副指導教官や最終審査の担当教員には、助言や指導をしてくれたことに対して、また共同研究者などには、助言や指導などに対して、感謝を述べることも必要です。このように、同じ立場で複数の人に謝辞を記載する場合は、研究遂行に関して近い人から書いていくのがよいでしょう。
研究分野によっては違いがあるかもしれませんが、通常は米国などでも近い人から書く場合も多くなっています。たとえば自身が企業所属で研究留学していた場合などでは、まず留学先の教授にお礼の記載を行い、企業で留学許可をした役員などへの感謝は、後でするようにします。
謝辞の書き方について、卒論や学位論文などに記載する内容から注意点まで紹介しました。
卒論や修論、博士論文などの学位論文では、最後に謝辞を入れて、指導教官などお世話になった人たちへの感謝を記載するのが通例です。
初めて卒論や学位論文を作成するわけですから、実際に執筆してみないとわからないことがたくさんあります。このように論文作成にたずさわる人にとっても、謝辞をどのように書いたらよいかは、重要な問題ともなります。
本記事が、はじめて論文作成において謝辞を記載する人にとってもお役に立てば幸いです。
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都内国立大学にて、研究・産学連携コーディネーターを9年間にわたり担当。
大学の知財関連の研究支援を担当し、特にバイオ関連技術(有機化学から微生物、植物、バイオ医薬品など広範囲に担当)について、国内外多数の特許出願を支援した。大学の先生や関連企業によりそった研究評価をモットーとして、研究計画の構成から始まり、研究論文や公募研究への展開などを担当した。また日本医療研究開発機構AMEDや科学技術振興機構JSTやNEDOなどの各種大型公募研究を獲得している。
名古屋大学大学院(食品工業化学専攻)終了後、大手食品メーカーにて31年間勤務した経験もあり、自身の専門範囲である発酵・培養技術において、国家資格の技術士(生物工学)資格を取得している。国産初の大規模バイオエタノール工場の基本設計などの経験もあり、バイオ分野の研究・技術開発を得意としている。
学位・資格
博士(生物科学):筑波大学にて1994年取得
技術士(生物工学部門);1996年取得