SEARCH BY CATEGORY

カテゴリから記事を探す

閉じるボタン
メニューボタン

ファーストオーサーとは?選定から論文著者との関係、研究不正時の責任まで解説

2025/3/27
研究・論文

ファーストオーサーとは、論文著者として研究論文の執筆・完成に重要な権限を持つ存在です。昨今、著名学術誌への論文掲載を含めて、論文作成に関するファーストオーサーの責任がさらに大きくなっていると感じます。

ファーストオーサーは、論文執筆だけではなく、研究計画の構想段階から、論文投稿後の査読者対応まで、全責任を持って対応する必要があります。 

本記事では、ファーストオーサーの選定から論文著者との関係や、研究不正があった場合の対応まで解説します。

ファーストオーサーとは?

いろいろな研究論文がありますが、研究論文の著者にはどのような条件が必要でしょうか。

研究論文の内容に対して、重要な貢献をしていることがまず大切です。当該研究全体に対して、積極的に関与しており、重要な構成要素となる研究全体の準備・検討・実施・分析などのそれぞれのプロセスに携わっていなければなりません。

論文著者は、論文作成への貢献度について一定の基準を満たしていなければなりません。ある種の学会ガイドラインとしては、著者資格として、研究に多大な貢献をした人や最終版の論文を承認した人、さらには発表された論文に対して責任を持つことができる人などを規定しているところもあります。著者資格の最低要件は、このようにいわば慣習法として合意されています。

ただ論文著者が必要とされる責任はそれほど明確ではなく、リスト上に示される順番によって著者に期待される役割が決定されている側面もあります。このように、著者が論文にどのように貢献したかを読者に示すことにより、当該論文の評価を高めることにもつながります。

最近の研究は、ひとりあるいは数名で実施することは少なくなっています。かなり多数の著者をかかえているのがふつうであり、研究室全体で取り組んだり、国内の複数の大学、あるいは海外大学との共同研究なども考えられます。また産学連携による様々な共同研究プロジェクトが増えており、大学と企業の研究者の共同作業により、研究論文が作成されることもあります。

次に研究論文の著者を記載する場合、どのような順番でその名前を掲載するのかという問題が生じます。基本的に論文の著者順は、研究者の相対的な貢献度に応じて決まるのが原則ですが、論文著者の最初に来るのが、ファーストオーサーです。

ここでは、ファーストオーサーの資格やその内容について紹介します。ファーストオーサーとはその名のとおり、第一著者ということで論文の著者欄に最初に記載されることとなります。 

論文には、先ほど記載しましたように、その研究に携わった研究者の名前が掲載されますが、一般的には貢献度に準じて順に名前が記載されます。研究計画をたて、実際に研究を主導した研究者がファーストオーサーとなります。また研究論文は、著者全員で執筆作業をするのではなく、基本的にはファーストオーサーがまず執筆し、それを他の著者が加筆や修正するのがふつうです。

研究論文の本体が完成すれば、研究への貢献度に応じて名前が記載され、当該研究の総責任者は最後に名前が記載されますが、この著者をラストオーサーと呼びます。

論文著者の種類とその条件

ここでは論文著者の種類と、その条件や選定法についても紹介します。

論文著者には、ファーストオーサー以外にも第二著者、最終著者や責任著者などが存在します。 

□ 第一著者(ファーストオーサー)

第一著者は先に記載しましたようにファーストオーサーともよばれ、論文完成に最も中心的な役割を果たした著者です。特に、当該論文に最大限の新規性や実用性、さらには学術的な貢献をした人となります。

新規性や実用性の観点は、実は特許申請時の必要最低条件とも合致しており、研究論文の著者がそのまま関連の特許申請をおこなうこともよくあります。特許もあたらしいイノベーションを論文と同様に目的としています。

研究完成後の執筆作業では、共著者のサポートを受けることもありますが、まず当該研究の遂行と実施にも責任を持つ人物であることが必要です。研究実施にあたって、データの取得と分析、さらには最終原稿の執筆においても主に責任を負うことになります。

なお研究者が博士号を取得するためには、ファーストオーサー論文は必要不可欠となっています。当方が論文博士号を頂いた大学(生物科学系)では、英語によるファーストオーサー論文が5点以上あることが、まず博士号申請の最低条件でした。5点という量的な基準以外にも、論文内容や研究自体の質の審査もあります。昔は英語論文が和文に比べて少なく、重要視されていましたが、昨今は逆に和文論文の方がすくないのではないかと思います。

□ 第二著者

セカンドオーサーともよばれる第二著者は、筆頭著者の次に、研究論文の完成に実際の貢献度が高かった著者となります。

研究計画を一緒に立てたり、当該の実験やデータ分析を共同で行ったりした人を記載します。博士課程の共同研究者を記載することもよくあります。第一著者ほどではありませんが、第二著者も当然ながら研究実績としても評価されます。

また共同ファーストオーサーがいる場合もあり、この場合どちらかが第二著者ということになります。複数の融合分野を必要とするプロジェクトでよく見られ、研究者それぞれの貢献度は、分野がことなると整合性をとるのは難しくなります。

たとえば新薬の開発に関する新規論文を開発したとき、ある場合では高分子化学などの基礎的分野の研究者が、新規化合物を作成し実験をするとともに、病院などで臨床研究によりその効果をあきらかにするなどといった研究論文は多くなっています。

このような場合、論文が複数作成されるときもあり、開発が初期段階の論文ですと、基礎的分野のファーストオーサーが、臨床段階の論文ですと医学部系オーサーが、それぞれ第一著者として、論文に記載される場合もあります。

もちろん基礎的分野の著者が引き続き第一著者を務めることもあり、成文化されているものではありません。いわゆる慣習法の範囲で決定されていることになります。なお共同ファーストオーサーは、アスタリスクなどの符号 (著者 A*、著者 B*、著者 C・・・) で表し、論文の最初に記載されます。

□ 最終著者(ラストオーサー)

最近は著者数がかなり多い論文が多くなっています。著者名の最後に記載されるのが、ラストオーサーともよばれる最終著者です。

このため第一著者、第二著者と最終著者の間には、いわゆる第三著者、第四著者などの著者が貢献度順に続いていきますが、特に数字上の区別はされていません。最終著者には、研究を遂行する研究室の主宰者やリーダーなどの名前を記載します。なお次に述べる、責任著者と最終著者が同一であることもかなりあります。

□ 責任著者(コレスポンディングオーサー)

責任著者は、コレスポンディングオーサーともよばれますが、先ほど記載しましたようにアスタリスクなどの記号を名前に付けて表示されます。

責任著者は、ファーストオーサーと兼務される場合がよくあります。また論文のラストオーサーである、当該研究室の代表者が兼務することも多くなっています。どちらが兼務するか、またファーストオーサーとは全く異なる人が責任著者となるかなど、実際の運用にあたってはいろいろなケースが考えられ、それぞれ注意することが必要です。

責任著者は、研究論文に関する最終的な責任を持ち、中長期的にも問い合わせに応じられることが大切です。

研究論文には、コレスポンディングオーサーの連絡先が記載されています。これにより、コレスポンディングオーサーが、その論文に関する問い合わせの代表者となります。

責任あるコレスポンディングオーサーとしては、すぐに連絡が取れる状態でなければなりませんし、後で述べるように万が一、研究不正があった場合には問題となることがあります。特に学術的なジャーナルとのコミュニケーションは、すべてタイムリーに行うことが必要です。

残念ながら、海外大学だけではなく、国内大学、特に有名大学でも研究不正にともなう、研究論文の取り下げが複数おきています。万が一の場合は、ファーストオーサーとともに迅速に対処することが求められており、ネイチャーなど国際的学術雑誌の姿勢は、最近特に厳しくなっています。

ファーストオーサーとしての論文作成方法

ファーストオーサーとしての論文作成方法や、その手順についても記載します。

ファーストオーサーは、研究論文の内容に対して重要な貢献をしており、当該の研究全体に対して、積極的に関与しており、重要な構成要素となる研究全体の準備・検討・実施・分析などのそれぞれのプロセスに携わっていなければなりません。

このため、単に論文執筆段階における論文作成のプロセスだけではなく、当該研究実施段階からの関与に加えて、研究計画の主導的プロセスが大切です。もちろんコレスポンディングオーサーやラストオーサーと異なる場合は、それらの研究者との共同検討による研究計画の設定を行います。論文執筆段階だけの論文作成ではなく、すべてのプロセスに精通していなければなりません。

まず研究計画、あるいはその前の段階の研究目標に対して知的貢献をしなければなりません。当該研究で目標とするのはなにか、しっかりと検討しておく必要があります。ときには「リサーチクエスチョン」などの手法を使用することも有効です。

参照リンク先:リサーチクエスチョンとは?その特徴・種類や作り方まで紹介します

研究室全体でリサーチクエスチョンを作成することも有効ですし、あるいはファーストオーサーとなる研究者が計画して、それを当該の研究計画に落とし込んでいくことも大切です。少なくとも、このような共有感が研究室運営といえども重要で、上からの一方的な指示になると研究室構成員の不満がたまることになりかねません。

研究目標が決まったら、次に研究計画作成に参加し、それらを達成するための方法論的アプローチを検討します。

その後、研究計画にそって実験をおこない、実験データを得ることになります。また、実験系の構築や文献レビューを行うなど関連の手順も必要です。

実験データが得られたら、その実験結果を分析・解析します。当然、実験データを伝えるためのグラフや表などを作成し、必要に応じて統計解析を行うことになります。これらのすべてのプロセスに対して、ファーストオーサーが実験に参画しなくても、少なくともその実験内容には精通していなければなりません。というのは、研究不正などで実験データの改ざんなどがないわけではないからです。

次の段階では、いよいよ当該の研究論文の原稿を作成します。また研究計画とも整合性をとり、ファーストオーサーである自身以外の、他の論文著者の順番や責任著者などを話し合って決めます。もちろん研究開始段階ですでに責任著者を含めて決まっている場合もありえます。

論文原稿が完成したら、すみやかに全ての論文著者に共有し、修正などがあればファーストオーサーとして対応します。最後に論文を学術雑誌に投稿することになります。研究計画の段階で投稿先がきまっていることもありますが、通常は、できあがった論文を検討して投稿先を決定することが多いようです。これもファーストオーサーが他の著者の意見も聞いたうえで、決定することになります。

投稿後には、投稿学術雑誌の査読者から質問が来るのでこれにも対応します。単に査読者が勘違いしていることもありますが、質問には迅速に誠実に回答します。なおファーストオーサーとして実験全体に精通していることにより、もし論文投稿後に、査読者から実験データの疑義があった場合も、すみやかに回答することができます。

査読付き学術雑誌に掲載されることで、研究がより多くの人々の目に触れるようになります。なお国内でも一部、査読がないジャーナルもありますが、そのような場合に掲載されても学術的にはあまり重視されません。

ネイチャーやサイエンスなどの超有名な学術雑誌では、あたらしい発見や実験での知見が世界中の専門家の目に触れることになります。

ファーストオーサーを含む論文著者にとっては、研究者としての著者自身の評価を高めることになると言えます。さらに発表した論文リストは、学位取得や昇進、科学者であれば研究継続のための資金獲得などにつながります。通常の場合、研究者としての就職や転職では研究論文リストが特に尊重されます。

研究不正とファーストオーサーの責任

研究不正とファーストオーサーの責任との関係についても解説します。

ファーストオーサーは、研究論文に関わる全員の貢献を確認することが必要です。というのは、研究不正が発覚した場合は、ファーストオーサーが責任を負うことになるからです。

日本ではちょうど10年ほど前になりますが、国内の著名な研究所での細胞生物学研究における研究不正がありました。ネイチャーという著名な学術誌に掲載されたので、さらにその課題が大きくなった感もありますが、体細胞が多能性を獲得するというその当時の従来の常識をくつがえすものでした。この論文では、ファーストオーサーが当該研究所の研究リーダーとなっていました。

研究不正の観点に関しては、すでに一部の学術誌では「研究公正」として、不正ではなく公正性の担保という考え方から議論されているようです。ネイチャーではその後、昨年も研究公正に関する世界的な調査レポートを公表しています。

下記リンク先:

責任ある科学と出版を促すための研究公正 | Nature ダイジェスト | Nature Portfolio

ける誠実で検証可能な手法を利用すること、規則および指針の順守に特別な注意を払い研究結果を報告すること、そして広く受け入れられている職業上の行動規範や基準に従うことであり、研究活動を正したり罰したりすることを目的として設けられている基準ではない。しかし残念ながら、研究公正は、それが守られているときではなく、害されたときだけ大きく報道される。近年、高温超伝導や幹細胞などさまざまな分野で数多くの研究公正に抵触する事例が発生し、注目を集めている。」としており、生物学などの最先端分野での事例について検討しています。 

ネイチャー発行元である、シュプリンガーネイチャーは、世界的な取り組みの一環として、2023年11月末から2024年1月末にかけて、日本科学振興協会と共同で、日本における研究公正のトレーニングの提供状況や内容の実態把握に関するアンケート調査を実施したとしています。(調査対象国:オーストラリア、英国、米国、インド、日本)

この中で、同誌の研究公正部長は、JRAF2024での議論の背景として、研究公正と出版倫理に関する最新の傾向と課題を概説しています。

同部長は、既発表論文の撤回件数が増加傾向にあり、2023年には1万編以上の研究論文が撤回されたと指摘しています。この中で、「1つの不正確な研究によってどれほどの被害が生じるのかを示す一例として、脳卒中患者の大腿骨近位部骨折に関する2005年の論文がある。この論文は、不正なデータに基づいていることが判明して2016年に撤回されるまでの間、220回以上引用され、ヒトと動物を対象とした無作為化比較試験81件に影響を与えた」

としていますが、その一例とされた論文の著者(ファーストオーサー)は、日本人なのです。

同社の調査では、日本では特にeラーニングによる研修が多く、実学が伴われていない傾向があるということです。とかく日本では、コンプライアンス研修なども含め、eラーニングによる研修が他国より多くなっています。大学ばかりでなく、官庁や企業でも同様な傾向があるようで、この辺の改善が必要かもしれません。

当方も大学勤務時に、研究倫理やコンプライアンスに関する、eラーニング研修を受けたことがありますが、これで解決するものではありません。研究者倫理として、いわゆる抽象論が多くなっていたりする傾向もありますが、その対局がオンライントレーニングとしているのでは、なかなかその間のギャップが埋まらないともいえます。

先ほど国内の著名な研究機関のバイオ研究の例をあげましたが、国内トップクラスの大学でも、ある付属のバイオ関連研究所で、実験写真の不正利用関連のデータが問題となったことがあります。実はその研究所では、内容は違いますが、一回ではなくそれ以前にも発生していたことがあるのです。

その後外部から見る限り、改善はされたとは思いますが、研究室や研究所の存在意義からはじめて、論文作成本数などを至上命題にしていないか、ときには検討してみることも大切かと思われます。

当方が以前所属していた別の大学のある研究室では、若手の教授であったこともありますが、研究室の助教(複数)などとの連携が、非常によく取れていました。

Nature Materialsなど数多くのネイチャー論文が、ほぼ毎年のように掲載されている研究マインド旺盛な研究室です。大学でもネイチャー掲載率は、トップクラスの研究室となっており、たいていの場合は、ファーストオーサーと責任著者は当該研究を推進する助教が務めています。

さらにラストオーサーと責任著者を、当該の教授が務めるという、研究室をあげて関連研究が推進されていました。またこの研究室では、学術誌に掲載される実験は必ず複数回、それも別の担当者が実施するという体制になっています。通常の場合、ひとつの論文の中には多数の実験系がありますが、その全部がカバーされているのです。

まとめ

研究不正と論文著者の関係は複雑で、万能薬のように解決策が容易に見つかるとはいえません。これは元来研究体制などは、慣習法などの観点から管理されているので、規則で限定することなどは難しくなっていることにも起因しています。また自由な体制の発露である、研究推進が疎外されてリサーチクエスチョンなどが、出にくくなっていることもあるかと思います。

本記事が、研究をはじめて間もない人やファーストオーサーの設定で悩んでいる研究者のみなさまのお役に立てば幸いです。

Readableを使って研究効率を上げよう

研究や論文執筆にはたくさんの英語論文を読む必要がありますが、英語の苦手な方にとっては大変な作業ですよね。

そんな時に役立つのが、PDFをそのまま翻訳してくれるサービス「Readableです。

Readableは、PDFのレイアウトを崩さずに翻訳することができるので、図表や数式も見やすいまま理解することができます。

翻訳スピードも速く、約30秒でファイルの翻訳が完了。しかも、翻訳前と翻訳後のファイルを並べて表示できるので、英語の表現と日本語訳を比較しながら読み進められます

「専門外の論文を読むのに便利」「文章の多い論文を読む際に重宝している」と、研究者や学生から高い評価を得ています。

Readableを使えば、英語論文読みのハードルが下がり、研究効率が格段にアップ。今なら1週間の無料トライアルを実施中です。 研究に役立つReadableを、ぜひ一度お試しください!

Readable公式ページから無料で試してみる

                           

RELATED ARTICLES

関連記事

リサーチクエスチョンとは?特徴・種類や作り方を紹介

2025/3/27

研究・論文

レビュー論文とは?書き方や必要な要素、ポイントを徹底解説

2024/7/13

研究・論文

英語論文の探し方:効率的な論文検索サイトと文献データベースの活用法

2024/8/8

研究・論文

原著論文とは?その定義から書き方や作成ポイントまで紹介

2025/1/17

研究・論文

システマティックレビューとは?考え方と書き方を徹底解説

2024/9/26

研究・論文

論文やレポートの顔となる序論とは?効果的な構成と例文付き書き方

2024/9/26

研究・論文

CATEGORY

カテゴリから探す

© Next Lab 2024